2017年12月16日(土)

プレスリリース

理研・阪大・東京医科歯科大、創薬や機能性高分子開発への応用に期待されるフルオロアルケンの簡便合成を実現

2017/10/12 17:10
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発表日:2017年10月12日

フルオロアルケンの簡便合成を実現

-創薬や機能性高分子開発への応用に期待-

 

■要旨

 理化学研究所(理研)ライフサイエンス技術基盤研究センター分子標的化学研究チームの植竹裕太特別研究員、丹羽節副チームリーダー、細谷孝充チームリーダー(東京医科歯科大学生体材料工学研究所教授)、大阪大学大学院工学研究科の阪口博信大学院生、大橋理人准教授、生越專介教授の共同研究チームは、アルケン[1]の炭素上に複数あるフッ素(F)[2]のうち、一つだけを選択的にホウ素(B)[3]に置き換える化学反応を開発し、医薬品や機能性高分子の部分構造として応用が期待されるフルオロアルケン[1]の簡便な合成を実現しました。

 ハロゲン元素の中で最も原子半径が小さいフッ素は全元素の中で最も高い電気陰性度[2]を持つなど独特な性質があります。この特性を生かしたもの作りを目指して、これまでさまざまなフッ素を持つ分子が開発されています。なかでもフルオロアルケンは、タンパク質など生体内に存在する分子に多くみられるアミド結合[4]と似通っていることから、アミド結合に置き換わる構造として古くから注目されてきました。しかし、その合成法が限られていたため、フルオロアルケンを活用した医薬品や機能性材料の開発はあまり行われてきませんでした。

 共同研究チームは、フルオロアルケンにホウ素を導入できれば、多彩な反応性を持つホウ素の性質を利用して、さまざまなフルオロアルケン化合物を簡便に合成できると考えました。フッ素とホウ素を併せ持つアルケンの合成法はほとんど知られていませんでしたが、フッ素を複数持つアルケンを原料に、触媒[5]として銅錯体[6]を用いることで、フッ素の一つをホウ素に置き換える化学反応の開発に成功しました。さらに、このフッ素とホウ素を併せ持つアルケンを用いることで、高脂血症治療薬であるアトルバスタチン[7]のアミド結合をフルオロアルケンに置き換えた分子を合成することにも成功し、本手法の実用性を実証しました。

 今回開発した手法は、有機合成化学の基本的な技術として、創薬や生命科学研究、機能性高分子の開発などへの応用が期待できます。

 本研究は、米国の科学雑誌『Journal of the American Chemical Society』への掲載に先立ち、オンライン版(2017年8月29日)に掲載されました。

 本研究成果は、国立研究開発法人日本医療開発研究機構(AMED)「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」の研究課題「ヒット化合物の迅速プローブ化技術の高度化による創薬・生命科学研究支援(研究開発代表者:細谷孝充)」、日本学術振興会 科学研究費補助金 基盤研究(A)「有機金属中間体を経由する機能性有機フッ素化合物の短段階合成」、公益財団法人 日本科学協会 笹川科学研究助成「新規PETプローブ開発を指向したモノフルオロアルケン類の自在合成法の開発」などの支援を受けて行われました。

■背景

 フッ素(F)は、周期表の第17族に属する元素(ハロゲン元素)です。同じハロゲン族である塩素(Cl)や臭素(Br)よりも際立って高い電気陰性度を持つことから、フッ素を含む化合物(フッ化物)を活用した医薬品や農薬、機能性高分子などの開発が盛んに行われています(図1)。

 特に医薬品開発においては、代謝安定性や脂溶性[8]の向上を目的として、薬剤分子へのフッ素の導入が試みられてきました。その方法の一つが、フッ素がアルケンに結合したフルオロアルケンの合成です。フルオロアルケンは通常のアルケンと同様に高い平面性を持つ一方で、電子求引性[1]のフッ素が結合することにより二重結合上の電荷が大きく偏った特徴的な性質を持ちます。これらの性質が、医薬品やタンパク質など生体内に存在する分子に多くみられるアミド結合と似通っていることから、アミド結合に置き換わる構造として古くから注目を集めてきました(図2)。

 また、四つのフッ素を持つテトラフルオロエチレンを重合させて得られるポリテトラフルオロエチレン(テフロン(TM))[9]は耐薬品性が高い材料として知られており、この他にもさまざまなフルオロアルケンを重合させることで得られる機能性高分子の開発が期待されています。このような応用を目指してフルオロアルケンの合成が試みられてきましたが、従来の方法では望みのフルオロアルケンのみを選択的に得ることは難しく、実用的な合成法の開発が求められていました。

 ※リリース詳細は添付の関連資料を参照

 

 

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

リリース詳細

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0460163_01.pdf

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