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ATRとAMED、脳の配線を望ましい方向に変更し認知機能を変化させるニューロフィードバック学習法の開発に成功

2017/8/7 15:50
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発表日:2017年8月7日

脳の配線を望ましい方向に変更し、認知機能を変化させるニューロフィードバック学習法の開発に成功

-脳回路のメンテナンス法の開発-

 

■本研究成果のポイント

 さまざまな認知機能は脳のネットワーク内の繋がり方(脳の配線図)に影響されます。精神疾患や加齢による認知機能の低下は、特定の配線における繋がり方の変容(過度に正または負の方向に偏る)が原因であると考えられています。

 本研究は、最先端のニューロフィードバック技術(機能的結合ニューロフィードバック学習法)を応用し、ネットワーク内での特定の配線における繋がり方を増加または減少の両方向に変化させることに成功しました。

 さらに、繋がり方を変化させた方向に応じて認知機能の変化が異なることを明らかにしました。

 本研究成果は、変容した繋がり方を正常化し、認知機能を回復するために必要な基礎技術となるため、精神疾患の治療や、脳の可塑性を生かした新しいリハビリテーション・学習支援法の開発への貢献が期待されます。

 ※参考画像は添付の関連資料を参照

■概要

 電気回路が故障した場合、配線を変更することでメンテナンスを行えます。このようなメンテナンスを脳回路でも行えないでしょうか?メンテナンスによって、例えば、衰えた認知機能を回復させられないでしょうか?脳の様々な領域は互いに結びつき、相互に影響を与えながら、巨大なネットワークを構成しています。株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)脳情報通信総合研究所などの研究グループ(山下歩、早坂俊亮、川人光男、今水寛)は、脳活動をミリメートル単位で計測できる装置(機能的磁気共鳴画像:fMRI装置)を利用し、脳の特定の領域同士の繋がり方を実験参加者に即座に知らせること(実時間フィードバックと呼びます)を繰り返し、ネットワーク内での特定の領域同士の繋がり方を増加または減少の両方向に変化させることが可能で、変化の方向に応じて認知機能の変化が異なることを明らかにしました(機能的結合ニューロフィードバック学習法)。

 精神疾患では、健常者と比較して情報の流れが正に偏りすぎる配線や負に偏りすぎる配線が存在しており、これらが認知機能低下の原因であると考えられています。本研究成果は、精神疾患の治療や、脳の可塑性を生かした新しいリハビリテーション・学習支援法の開発への貢献が期待されます。

■背景

 ヒトの脳は巨大な情報ネットワークと見なすことができます。このネットワークは、遺伝で大まかな構造が決まり、さまざまな経験をすることで、そのヒト固有のネットワークが形作られます。最近では、わずか5分の脳活動計測で、そのヒトの脳内の領域同士がどのように繋がっているかを解読できるようになりました。これは、個人に特有な脳の配線図とも言えます。この脳の配線図から、年齢・個性・認知能力などを予測することも可能になって来ました(注(1))。

 加齢や精神疾患などで生じる脳の障害も、この脳のネットワークの障害として理解されるようになりました。加齢や精神疾患による認知機能の低下の一部は、比較的少数の特定の配線の繋がりが正に偏りすぎたり負に偏りすぎたりし、情報の流れの異常によって生じると考えられています。しかし、精神疾患の治療法として用いられてきた薬物や認知行動療法、加齢による認知機能の低下を防止する脳トレーニングなどは、脳全体の配線に広く影響を与え、特定の領域やネットワークの繋がり方を狙い通り増減させることはできません。我々の研究グループは、2015年に配線をピンポイントで変えられる訓練法を開発しました(注(2))。しかし、配線の繋がりを変えられるということが解ったのみで、1)特定の配線における繋がりを増加させたり減少させたり出来るか、2)繋がりを増減させることで日常生活に重要な認知機能にまで変化を及ぼせるか、という治療や認知機能の回復に応用する上で重要なことがわかっていませんでした。

■研究内容

 本研究は、神経細胞の活動によって引き起こされる脳の血流変化をミリメートルの単位で計測できるfMRI装置を使いました。今回用いたfMRI装置には、計測した脳活動をリアルタイムで解析し、実験参加者に解析結果を即座に知らせる(実時間フィードバック)機能が付加されています(図1)。主な実験参加者は健常な30名(男性 26人、女性4人、平均年齢22.7歳)です。この実験参加者を、特定の配線における繋がりを増加させる群18名と減少させる群12名の2群に分けました。

 fMRI装置で、脳内2カ所の活動の時間変化を14秒間計測しました。14秒間計測された脳活動の時間変動の類似性を計算し、その結果を実験参加者にスコアとして知らせました。変動の類似性は、2つの脳領域における活動の増減が同じ方向に変化するほど高くなります。繋がりを増加させる群では変動の類似性が高ければ高いほどスコアが高くなるように、繋がりを減少させる群では変動の類似性が低ければ低いほどスコアが高くなるようにしました。実験参加者は、次の14秒でスコアがより高くなるように試行錯誤の努力をしました(結合ニューロフィードバック学習法:図2A)。これを1日平均40分、5日間行いました。その結果、日を重ねるに連れて繋がりを増加させる群では繋がりが徐々に増加し、減少させる群では徐々に減少し、学習効果があることが解りました(図2B)。

 この学習によって認知機能が変化するか調べるため、5日間の学習の直前、直後のそれぞれで、持続的注意能力や不適切な応答を抑制する力を計測する認知課題などをおこないました。その結果、幾つかの認知課題において学習前後での認知課題の成績の変化分が、繋がりを増加させた群と減少させた群で有意に異なっていました(図3)。この結果は、繋がりを増加させた場合と減少させた場合で認知機能の変化に違いがあったことを示しています。

 ※リリース詳細は添付の関連資料を参照

 

 

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

参考画像

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0453469_01.JPG

リリース詳細

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0453469_02.pdf

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