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国立遺伝学研究所と理研と阪大など、DNAは生きた細胞の中で不規則な塊を作っていることを解明

2017/7/14 15:35
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発表日:2017年7月14日

DNAは、生きた細胞の中で不規則な塊を作っていた!

~遺伝子情報や細胞関連疾患の理解につながる成果~

 

 DNAは規則正しくらせん状に折り畳まれて細胞の核の中に収められていると、長い間考えられてきました。ところが近年、この規則正しい構造は存在せず、不規則に核のなかに収納されていることがわかってきました。しかしながら、実際の収納の様子を「生きた細胞」で捉えた決定的な証拠はありませんでした。

 このたび情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所・野崎 慎 研究員・前島 一博 教授らと大阪大学・永井 健治 教授、理化学研究所・岡田 康志 チームリーダーの共同グループは、光学顕微鏡の分解能を超える超解像蛍光顕微鏡注1)を構築することで、生きた細胞内におけるDNAの収納の様子を観察することに世界で初めて成功しました。その結果、DNAは不規則に折りたたまれ、「クロマチンドメイン」と呼ばれる小さな塊を形作っていることがわかりました(図1)。このクロマチンドメインは細胞増殖、細胞分裂を通じて維持されていることから、遺伝情報の検索・読み出し・維持に重要な染色体ブロック(機能単位)として働くことが示唆されます。

 本研究の結果によって、遺伝情報がどのように検索され、読み出されるのかについての理解がさらに進むとともに、DNAの折り畳みの変化で起きるさまざまな細胞の異常や関連疾患の理解につながることが期待されます。

 本研究は、大阪大学 産業科学研究所・永井 健治 教授、理化学研究所 生命システム研究センター・岡田 康志 チームリーダー、米国MBL・谷 知己 チームリーダー、高輝度光科学研究センター・城地 保昌 チームリーダー、国立遺伝学研究所・鐘巻 将人 教授、オランダエラスムスMC・KerstinS.Wendt チームリーダー、慶應義塾大学・冨田 勝 教授、国立遺伝学研究所・野崎 慎 学振特別研究員、前島 一博 教授グループとの共同研究成果です。

 本研究成果は、平成29年7月13日12時(米国東部時間)に米国科学雑誌「MolecularCell」に掲載されます。

 文部科学省 科学研究費補助金・新学術領域研究 「少数性生物学」(領域代表:大阪大学 永井 健治 教授)、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業(CREST) 「統合1細胞解析のための革新的技術基盤」(研究総括:東京大学 大学院 菅野 純夫 教授)(研究課題名「超解像3次元ライブイメージングによるゲノムDNAの構造、エピゲノム状態、転写因子動態の経時的計測と操作」(JPMJCR15G2)、研究代表者:岡田 康志)、および科学研究費補助金(16H04746)の支援を受けました。

<研究の背景>

 私たちの体を構成する一つ一つの細胞には、全長2メートルにおよぶゲノムDNAが収められています。このDNAは直径2ナノメートル注2)のとても細い糸で、「ヒストン」という樽状のたんぱく質に巻きつくことで、直径約11ナノメートルの「ヌクレオソーム」を作ります(図2上段)。今から40年以上前に提唱された説では、このヌクレオソームがらせん状に規則正しく折り畳まれることによって直径約30ナノメートルの「クロマチン線維」を形成し、さらに、らせん状に巻かれて階層構造を作るとされていました(図2中段左)。この説は広く受け入れられてきましたが、国立遺伝学研究所・前島教授らは、2008年よりクライオ電子顕微鏡注3)やX線散乱注4)の実験によって、定説のような規則正しいクロマチン線維は存在せず、ヌクレオソームが不規則に細胞内に納められていることを提唱してきました(図2中段右)。それ以降、クロマチンの実体については、「生きた細胞」でのさらなる理解が求められてきましたが、その構造は数十から数百ナノメートルと非常に小さく、従来の光学顕微鏡を用いて観察することは困難でした。

<研究の成果>

 本研究では、ヌクレオソームの1個1個を観察できる超解像蛍光顕微鏡を構築することで、クロマチンの実体を「生きたままの細胞」で観察することを実現しました。その結果、クロマチン線維の代わりに、多数のヌクレオソームが不規則に折り畳まれることで形作られる直径約160ナノメートルのコンパクトな塊(クロマチンドメイン)が核内でダイナミックに動く様子を世界で初めて観察することに成功しました(図1)。また、このようなクロマチンドメインの性質がどのようなメカニズムによって生み出されたのか調べたところ、ヌクレオソーム間の結合と、クロマチンを束ねるのに必要なコヒーシンたんぱく質注5)の2つが重要であることがわかりました。さらに、クロマチンドメインは細胞分裂期の染色体でも観察されました。このことから、クロマチンドメインは遺伝情報の検索・読み出し・維持に重要な染色体ブロック(機能単位)であると考えられます(図3)。

<今後の期待>

 細胞の多くの活動は、DNA上の遺伝情報を検索するところから始まります。しかし、核内において遺伝情報を検索する際、探す領域が膨大だと効率が悪くなります。そこで、クロマチンドメインは、ブロックを形成することでたんぱく質のアクセスを調節し、情報検索の制御・効率化に関わっていると考えられます。また、DNAの折り畳みがおかしくなると、細胞にガン化などのさまざまな異常をもたらすことが近年わかってきました。本研究の成果によって、このような細胞の異常や関連疾患の理解が進むことが期待されます。

 ※リリース詳細は添付の関連資料を参照

 

 リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

リリース詳細

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0451304_01.pdf

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