2019年2月20日(水)

プレスリリース

東北大と熊本大と京産大など、細胞内の不良品たんぱく質の分解メカニズムを解明

2017/5/5 22:00
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発表日:2017年5月5日

細胞内の不良品たんぱく質の分解メカニズムを解明

~アルツハイマー病など神経性疾患の成因解明が可能に~

■ポイント

・これまで、どのように効率よく不良品タンパク質中のジスルフィド結合を還元し、分解を促進するのか分かっていなかった。

・一分子レベルでの観察により、ERdj5のC末端側クラスターの自由度が、誤って形成されたジスルフィド結合の還元に必要であることを明らかにした。

・構造異常たんぱく質を速やかに分解するための還元経路に関する理解がさらに深まることが期待される。

JST戦略的創造研究推進事業において、東北大学の稲葉 謙次 教授、熊本大学の小椋 光 教授、京都産業大学の永田 和宏 教授らのグループは、X線結晶構造解析(注1)により、ジスルフィド結合(注2)開裂酵素ERdj5のクラスターの配向が異なる2つの結晶構造を解明しました。

細胞内には、正常なたんぱく質の高次構造形成反応を促進する仕組みがある一方で、構造異常のたんぱく質を速やかに分解・除去するための巧妙な品質管理システムも存在します。Protein Disulfide Isomerase(PDI)ファミリーたんぱく質(注3)の1つであるERdj5は、哺乳動物細胞の小胞体中で誤って形成されたジスルフィド結合を還元し、小胞体関連分解(注4)と呼ばれる分解機構を促進させる役割を担っています。ERdj5の全体構造はそれぞれが複数のドメインから構成されている2つのクラスター(N末端側クラスターとC末端側クラスター)に分けることができます。両クラスターは、フレキシブルなリンカー領域(注5)で連結されていることから、動きに富むことが示唆されていました。しかし、この動きがERdj5の機能発現にどう関わるか不明だったため、詳細な分子機構の解明が求められていました。

さらに高速原子間力顕微鏡(注6)により、ERdj5のC末端側クラスターがダイナミックに動いている様子を一分子レベルで観察することに世界で初めて成功しました。さらに細胞を用いた実験により、ERdj5のC末端側クラスターの動きが、構造異常たんぱく質中のジスルフィド結合の還元および分解促進に重要な役割をもつことが強く示唆されました。

本研究の成果は、2017年5月4日(米国東部時間)に「Structure」のオンライン速報版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)

 研究領域:「ライフサイエンスの革新を目指した構造生命科学と先端的基盤技術」

 (研究総括:田中 啓二 東京都医学総合研究所 理事長兼所長)

 1)研究課題名:「小胞体恒常性維持機構:Redox, Ca2+, タンパク質品質管理のクロストーク」

 研究代表者:永田 和宏(京都産業大学 総合生命科学部 教授)

 研究期間:平成25年10月~平成31年3月

JSTは本領域で、先端的ライフサイエンス領域と構造生物学との融合により、ライスサイエンスの革新に繋がる「構造生命科学」と先端基盤技術の創出を目指します。上記研究課題では、ERdj5を中心として、タンパク質恒常性(ホメオスタシス)・レドックス(酸化還元)恒常性・カルシウム恒常性の3つの主要な恒常性のクロストーク分子基盤を、静的(X線結晶構造解析)および動的(FRET解析)な構造解析によって解明します。

 2)研究課題名:「ATP/GTPが駆動するタンパク質マシナリーの動的構造生命科学」

 研究代表者:安藤 敏夫(金沢大学 理工研究域バイオ AFM 先端研究センター 特任教授)

 研究期間:平成25年10月~平成31年3月

上記研究課題では、ATP/GTPで駆動される多彩なタンパク質マシナリーが働いている現場を直に観る、時には分子を操作する新しい手法により、機能発現機序、複数のサブユニット間の協調メカニズムと作用、化学・力学エネルギー変換の本質の解明研究を推進し、新しい構造生命科学を開拓します。

<研究の背景>

小胞体は分泌たんぱく質や膜たんぱく質の合成の場であり、そこにはジスルフィド結合形成因子や分子シャペロン(注7)など、高次構造形成反応を促進するさまざまな因子が存在しています。中でもジスルフィド結合の形成、組み換えは正しい高次構造を獲得するために非常に重要であると考えられています。一方で、ジスルフィド結合は誤ったシステイン間で形成されることもあります。そのような結合は、たんぱく質の構造異常を誘起するため、小胞体内にはジスルフィド結合の修復システムが備えられています。しかし、最終的に誤った構造をとってしまった不良品たんぱく質は、細胞の品質管理のため、小胞体関連分解によって分解されます。この時、誤ったジスルフィド結合はたんぱく質が分解されやすいように還元されます。ジスルフィド結合開裂酵素ERdj5は、小胞体中で生じた不良品たんぱく質のジスルフィド結合を切断することで構造を解きほぐし、サイトゾル(注8)への逆輸送やプロテアソーム(注9)による分解を促進する上で重要な役割を果たします。

これまでERdj5について、小胞体に存在するEDEM1(注10)やBiP(注11)などと協同してたんぱく質分解を促進すること、全体構造がN末端側クラスターとC末端側クラスターに分割されること、ジスルフィド結合開裂に関わる活性部位はC末端側クラスターに存在することなどが、本研究グループによって明らかにされました(Hagiwara et al., Mol.Cell 2011)。しかし、大きさやジスルフィド結合の数が多様な構造異常たんぱく質に対して、どのようにして効率よくジスルフィド結合を還元し、分解を促進するかはこれまで分かっていませんでした。

※リリース詳細は添付の関連資料を参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

リリース詳細

http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0443983_01.pdf

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