九大、高性能カーボンナノチューブ/無機金属酸化物ハイブリッド電池触媒の開発に成功
発表日:2017年3月30日

高性能カーボンナノチューブ/無機金属酸化物ハイブリッド電池触媒の開発に成功
燃料電池の本格普及促進に期待
九州大学大学院工学研究院/カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)の中嶋直敏教授、藤ヶ谷剛彦准教授、Jun Yang 特任助教の研究グループは、白金の代わりにポリマー及び無機金属酸化物を用いて高い活性を持つ燃料電池用触媒を開発することに成功しました。
多くの無機金属酸化物は、酸素還元反応、酸素発生反応、水素発生反応等のエネルギー変換の基幹反応の触媒として注目されてきました。しかしながら、多くの場合、これらの反応に対する触媒能は必ずしも高くないのが現状です。原因として、無機金属酸化物の電導性の低さ、及び触媒活性サイト面積の小ささが挙げられます。本研究では、電導性が高い高純度多層カーボンナノチューブ(CNT)を素材として用いて、まずこれをポリマー(ポリベンズイミダゾール(PBI))で被覆し、この上にスピネル型(※1)無機金属酸化物(NixCo3-xO4)のナノ粒子をソルボサーマル法(※2)で作製しました。この方法により作製した触媒は、非常に効率的な酸素還元反応及び酸素発生反応を示すことが明らかになりました。さらに高い耐久性も示すことが判明しました。この方法は、私たちが展開してきた CNT/PBI/Pt 触媒(※3)作製方法を無機金属材料に応用したもので、導電性のナノチューブ上にスピネル型無機金属酸化物のナノクリスタル(※4)を均質にコートすることを可能にし、これが触媒の高活性に繋がっています。
燃料電池の本格普及には、高い活性を持つ(すなわち、現行の白金ベースの触媒に匹敵する)完全非白金型触媒の開発が極めて重要です。本触媒が、完全非白金型触媒であることから、白金を全く使用しない効率的な燃料電池及び酸素発生触媒の開発は、今後のエネルギー材料(触媒)研究へ大きく貢献するものです。
本研究成果は、2017 年 3 月 30 日(木)午前 10 時(英国時間)に国際科学誌 Nature の姉妹誌であるオンラインジャーナル『Scientific Reports』で公開されます。
*参考図は添付の関連資料を参照
○研究者からひとこと:
本研究は、カーボンナノチューブと無機金属酸化物のハイブリッドにより、新しい機能、特性を持つ電池触媒が創生できることを示したものです。本触媒について、完全非白金型触媒として、今後さらなる性能向上を目指し、研究を進展していきます。
■用語解説
(※1)スピネル型:典型的結晶構造形式の一つ
(※2)ソルボサーマル法:高温または高圧の溶媒(または超臨界流体)を用いて固体を合成する方法
(※3)CNT/PBI/Pt 触媒:カーボンナノチューブをポリマーで被覆し白金粒子を担持した触媒
(※4)ナノクリスタル:数百から数万個の原子が集合した、数ナノメーターサイズの大きさの結晶
リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
参考図
関連リンク