トランプ氏「一つの中国に縛られず」 中国の反発必至
【ワシントン=吉野直也】トランプ次期米大統領は11日放送のFOXテレビの番組で、米国が台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」という従来の政策を維持していくかは、中国の対応次第だとの考えを表明した。相手を揺さぶりながら交渉を優位に運ぼうとするトランプ流の発言とみられるが、中国の反発は必至だ。
トランプ氏は同番組で「私は完全に『一つの中国』政策を理解している」と力説。一方で「貿易関係などで(中国と)合意を得られなければ、なぜ『一つの中国』政策に縛られないといけないのか」と言明した。「一つの中国」政策を維持するかどうかを見極める具体的な政策として中国の通貨政策や、南シナ海での海洋進出、北朝鮮の問題での対処を挙げた。
「一つの中国」政策を維持する中で断交を続けていた米台だが、

トランプ氏は2日に台湾の蔡英文総統と電話で協議。米次期大統領と台湾の総統とのやり取りは1979年の断交以来、初めて明らかになった。ペンス次期米副大統領はこれに関して「米国の中台政策に変更はない」と述べ、「一つの中国」政策を維持する方針を示していた。
トランプ氏は次期駐中国米大使に、親中派とされる中西部アイオワ州のテリー・ブランスタド知事を指名した。85年に農業視察団員として同州を訪れた習近平国家主席の「旧友」といわれ、トランプ氏は声明で「中国指導部と相互に有益な関係を築ける」と表明。中国に対しては硬軟両面の姿勢をみせていた。
中国は台湾問題を譲歩できない「核心的利益」と位置づけている。2日の蔡総統との電話協議についてトランプ陣営に抗議したばかり。中国外務省は「台湾問題は米中関係のなかで常に最も重要で、最も敏感な問題だ」と強調し、台湾問題を適切に扱うよう求めていただけに衝撃は大きい。
中国外務省はトランプ氏の出方を見極めるため、正式就任前の言動には抑制的に反応する方針を示している。ただ、外交関係者の中にはトランプ氏の外交政策への不信感が徐々に高まっている。共産党機関紙の人民日報系の「環球時報」(電子版)は「トランプ氏は外交経験がないため強硬派の影響を受けやすい」と警戒感を示した。
トランプ氏は11日放送のテレビ番組で蔡氏との電話協議を「聞かされたのは1、2時間前だ。会話は短時間で、お祝いを受けた。電話を取らないのは失礼」と説明。米中央情報局(CIA)が大統領選でロシアの介入があったと結論づけたとの米メディアの報道には、「ばかげている」と一蹴した。