2019年2月24日(日)

鹿児島で32年ぶりウイスキー生産 本坊酒造、人気追い風

2016/2/11 3:00
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鹿児島県の酒造大手、本坊酒造(鹿児島市、本坊和人社長)が発祥の地である鹿児島県南さつま市に日本最南端となるウイスキー蒸留所を今秋に新設する。県内でのウイスキー生産は同社が長野県に拠点を移して以来で、32年ぶりとなる。国内外でのウイスキー需要の拡大を受け、原酒を安定的に確保。海外も含む市場開拓につなげる。

ウイスキー原酒は石蔵で熟成させる(鹿児島県南さつま市の津貫工場)

ウイスキー原酒は石蔵で熟成させる(鹿児島県南さつま市の津貫工場)

「当社を含めてジャパニーズウイスキーに世界の注目が集まっている。今はまたとないチャンスだ」。本坊社長はこのタイミングで新規投資に踏み切る理由を説明する。

計画では津貫工場(南さつま市)内の倉庫(約660平方メートル)の一部を活用し、蒸留釜1対2基や発酵タンク5基などを備える。総工費は約5億円。5月に着工して10月に完成。11月の稼働開始を予定する。生産した原酒は3年以上熟成させ、主にシングルモルトウイスキーに用いる。

同社は現在、長野県でウイスキーを生産している。国内販売量は2008年で19キロリットルだったが、15年は約240キロリットルに急増。将来、生産が追い付かなくなる状況が想定されるという。新しい蒸留所を持つことで2拠点体制となり、20年は700キロリットルの販売を見込む。

長野県の拠点で増産する手もあったが、複数の拠点で特徴の違った原酒を確保すれば、品ぞろえの幅も出しやすい。本坊社長は「長野ではストレートでクリアな味の原酒ができる。鹿児島では(郷土を象徴する活火山)桜島のようなダイナミックな原酒を目指す」との構想を語る。

同社は「桜島」ブランドなど焼酎が経営の柱になっているが、ウイスキーも長年手掛けてきた。1949年に鹿児島でウイスキー製造免許を取得。60年には山梨県にウイスキー蒸留設備を完成させた。設計・指導したのはNHK連続テレビ小説「マッサン」のモデル、竹鶴政孝氏の上司だった岩井喜一郎氏だ。

鹿児島のウイスキー生産は84年まで続けたが、より好適な立地を求め85年に長野県で生産を開始。その「信州マルス蒸留所」製造の「マルスモルテージ 3プラス25 28年」は世界的なウイスキー品評会「ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)2013」でブレンデッドモルト・ウイスキーの最高賞を取得した。

鹿児島でのウイスキー生産再開に伴い、今後は一段と世界市場を見据える。2015年はウイスキー販売額の約35%を海外で稼いだが20年には50%にする計画。輸出担当部署の人員はこの1年で1人から3人に増やしたが、さらに1人増員することを視野に入れる。

さらに鹿児島の新蒸留所は当初から見学やテイスティングなどができるようにし観光客を受け入れる。本坊社長は「インバウンド(訪日外国人)も含めて交流人口を増やせば、地元の活性化にも貢献できる」と考える。

同社は15年6月期の売上高が約72億円。サントリーホールディングスなどに比べれば企業規模は小さいが「世界中のファンから尊敬される製品を生み出し、世界で戦える会社を作る」(本坊社長)という気概は決して負けていない。

(鹿児島支局長=松尾哲司)

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