2018年10月16日(火)

キタ─ミナミに新動脈 なにわ筋線、31年春開業
梅田─関空直結、20分短く 事業費圧縮、3300億円

2017/5/24 2:30
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関西国際空港や新大阪駅へのアクセス向上のため、大阪都心を南北に貫く鉄道新線「なにわ筋線」を建設することで大阪府・市、JR西日本、南海電気鉄道などが合意し、23日発表した。関空と梅田を直結する初の大動脈は2031年春に誕生する。新たなヒトの流れはインバウンド(訪日外国人)や企業の誘致といった経済活性化にも寄与。大阪駅北側の「うめきた」や再生医療研究の拠点整備が検討されている中之島に設置される新駅周辺の開発にも弾みがつきそうだ。

なにわ筋線はJR西と南海が一部共用する7.4キロの路線だ。関西国際空港へのアクセス改善が見込まれる。現在は梅田と関空を結ぶ特急列車はない。うめきた地区で建設中の北梅田駅が23年春に開業すると、北梅田―関空駅間は環状線を通るJR特急で51分と、現状の大阪―関空駅間の快速電車より約15分短縮される。31年春開通のなにわ筋線を走ると、国土交通省試算ではさらに5~11分短縮される。

北梅田駅と南海新難波駅およびJR難波駅の間で検討された4つの中間駅は2つに絞った。中之島再開発促進効果のある中之島駅と既存の鉄道駅が遠い西本町駅は建設するが、鉄道駅がすでにある福島駅と西大橋駅は見送られた。1駅当たり200億円かかるとされ、その他のコストダウン策を含めて事業費を当初想定の4千億円から3300億円に削減した。

事業手法は京阪中之島線や阪神西大阪線と同じ上下分離方式で、JRと南海が40年間かけて運行収益から一定の負担額を返済していく。

新難波駅新設や路線が長い南海と、難波駅を建設済みのJRの負担比率を6対4、大阪府市の負担割合を同一とした場合、負担額は国が約797億円、南海774億円、大阪府・市それぞれ607億円、JR516億円。

阪急電鉄は十三駅に地下ホームを新設して北梅田駅を結ぶ別の地下鉄道を建設し、レール幅が狭いJRや南海の狭軌に対応した車両でなにわ筋線に乗り入れる方向だ。

市などは2年強の時間がかかる環境影響評価(アセスメント)の手続きに今年度着手する方針。

課題はさらなる運行時間の短縮だ。なにわ筋線だけの短縮効果は5~11分で、大阪市は線路の設計や運行方法などを工夫して「1分でも2分でも短くしたい」(交通政策課)としている。

■中之島・うめきた開発 弾み

なにわ筋線事業で建設される中之島駅の東側は大阪大学医学部跡と隣接する。同跡地では大阪市が2021年度に新美術館を開設する予定で、大阪府・市や関西経済連合会、大阪大学が構想作りを進めている再生医療拠点を中心とする再開発エリアの最寄り駅となる。

新駅西側ではリーガロイヤルホテルの建て替えを軸として、大阪市立高校跡地を活用した再開発が検討されている。

中之島駅の東西で再開発が検討されており、「新駅をどこに作るかという議論の中で、中之島駅は最優先だった」(大阪市幹部)という。

なにわ筋線の北の起点となる北梅田駅は大阪駅北側の再開発エリア「うめきた2期地区」の中に建設される。現在は更地の2期地区だが、今年度中には開発事業者を決める事業コンペが始まる。23年春に街開きする予定だ。

すでに開業したうめきた1期事業を含めて海外企業の誘致が課題になっている。中之島の再生医療拠点も海外の研究者の誘致や海外拠点との連携がテーマだ。

関西空港の16年度の総旅客数は前年度比7%増の2571万人と2年連続で過去最高を更新した。このうち国際線は11%増の1914万人。なにわ筋線が開通するのは14年後だが、その間に再開発を進め、関空と大阪中心部の往来がなにわ筋線によって便利になれば、インバウンドのさらなる誘致の起爆剤になりそうだ。

なにわ筋線を走る電車が止まる新大阪駅には、19年春に延伸される新たな鉄道ルート「JRおおさか東線」が乗り入れる。大阪環状線の東側を南北に結ぶおおさか東線は、08年に放出(はなてん)―久宝寺間の南区間(9.2キロ)が開通。放出―新大阪の北区間(11.1キロ)は建設中だ。新大阪駅には将来、リニア中央新幹線や北陸新幹線も乗り入れる予定で、なにわ筋線の価値が一層高まるとみられる。

■悲願の梅田、南海が進出

なにわ筋線の議論は当初、JR西日本が南海電気鉄道の梅田進出に否定的で難航した。だが南海が事業費を多めに負担することで議論が進んだ。

南海は南海難波―関西空港間を運行する特急「ラピート」がJR新大阪に乗り入れることになる。南海が地盤とする大阪南部や和歌山では沿線人口の減少が本格化している。輸送人員の年間の増減率は数%が一般的だが、大阪中心部と関空を結ぶ空港線は2桁増が続く全国屈指の成長路線。なにわ筋線開業で成長に弾みを付けたい考えだ。

JR西日本は新大阪―関空で特急「はるか」を運行するが、時間短縮でより広域で利用者を取り込める。

阪急電鉄は十三と北梅田を結ぶ連絡線を作り、なにわ筋線への乗り入れを検討する。今月19日に発表した2025年までの長期ビジョンでは新大阪―十三を結ぶ新大阪連絡線を盛り込んだ。なにわ筋線が開通すれば、阪急沿線の住民が関空に向かう際にJRに流れる可能性がある。阪急は梅田駅周辺で開発してきただけに人の流れの変化を成長につなげたい思惑があるようだ。

▼なにわ筋線 JR大阪駅北側の再開発地区「うめきた」の地下に建設中の「北梅田駅」(仮称)から難波付近まで7.4キロを結ぶ鉄道新線。概算事業費は3300億円。

1989年、旧運輸大臣(現在の国土交通大臣)向けの審議会答申に計画が盛り込まれた。94年開港の関西国際空港に直結するほか、大阪都心の南北幹線と位置づけられた。地下鉄御堂筋線の混雑を緩和する狙いもあった。

複数の鉄道会社の調整や巨額の事業費などが壁になったとみられ、計画はなかなか進まなかった。しかし2008年、大阪府の橋下徹知事(当時)が建設推進を求め、府と大阪市、経済界が協議。14年から大阪府市とJR西日本、南海電気鉄道による4者協議が始まった。

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