大阪、ラーメン店なぜ少ない(謎解きクルーズ)
ダシ文化、うどんに軍配 「安くてあっさり」人気の鍵?

2015/5/30 6:00
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全国ではラーメンへの支出が減る一方、大阪では増えている(大阪市淀川区の「人類みな麺類」)

全国ではラーメンへの支出が減る一方、大阪では増えている(大阪市淀川区の「人類みな麺類」)

「大阪ではラーメン店を探すのに苦労する」。大阪にやって来た転勤者からよく聞かれる話だ。こってり味の京都、豚骨しょうゆの和歌山など近畿の他地域にはご当地ラーメンが根付いているのに、大阪にラーメン店が少ないのはなぜだろう。

タウンページデータベースによると、大阪府のラーメン店は人口10万人当たり10.6店で兵庫県、奈良県と並び全国最低レベルだ。消費額も少ない。総務省の家計調査によると、1世帯(単身者世帯を除く)が外食でラーメンに使う金額の全国平均は5548円(2012~14年平均)。大阪市は3245円で、和歌山市に次いで全国で2番目に少ない。和歌山には全国に知られたご当地ラーメンがあるが、大阪はラーメンの存在感が薄いように思える。

◇ ◇ ◇

大阪の文化に詳しい相愛大学の前垣和義客員教授は「ダシ文化と多様な食が原因」と話す。昔ながらのしょうゆ味のラーメンは、昆布ダシに親しんできた大阪人には物足りないとの見立てだ。豚骨や鶏ガラなど複数の味を合わせた最近流行の味の濃いラーメンも「ダシの味を感じにくいため大阪では広まりづらいのではないか」(前垣さん)。

価格も問題だ。ラーメン1杯は700~900円程度で、具や麺の大盛りを追加すれば1000円を超える。食文化が成熟した大阪では、同じ価格で様々な料理を選べ、「ラーメン1杯に1000円払う価値を感じない人も多い」(前垣さん)。

とはいえ、大阪にはお好み焼きやたこ焼きなど「粉もん」の伝統があり、小麦製品のラーメンを受け入れる土壌はあるはず。だが、食文化を研究する武庫川女子大学の三宅正弘准教授は、逆に「お好み焼き店やうどん店が存在していたことが、ラーメンの浸透を妨げた」と言う。

三宅さんによると、ご当地ラーメン店は地元住民の「憩いの場」となって地域に根付いたケースが多い。大阪ではすでにお好み焼き店やうどん店などが憩いの場となり、ご当地ラーメン店が付け入る余地はなかったというわけだ。

◇ ◇ ◇

そんな大阪でも、最近は健闘する店が増えている。阪急京都線の南方駅(大阪市)を出ると目に飛び込んでくるのは80人近い行列。その先にあるラーメン店「人類みな麺類」は大阪で最も長い行列ができるといわれる人気店だ。

市外から足を運ぶ人も多く、大阪府吹田市から毎週訪れる会社経営者の野村秀和さん(46)は「あっさりして甘みのあるスープが他の店にはない魅力」と話す。

店長の北健志さんは「鶏ガラに魚介を加えて甘みを出したスープが売りもの」という。実際ほとんどの客が麺や具でなくスープから口にしており「大阪のお客さんはダシやスープにこだわる」(北店長)と感じるという。1杯800円のラーメンの満足感を出すため、チャーシューを大きくするなど工夫している。

関西を地盤とするチェーン店「どうとんぼり神座(かむくら)」も人気の秘密はあっさり味と安さ。看板メニュー「おいしいラーメン」は530~760円。野菜の甘みを生かしたしょうゆ味のスープと具の白菜が特徴で「高齢の常連客も多い」(店主の橋川健司さん)。

家計調査によると、全国ではラーメンへの支出は減少傾向なのに、大阪では逆に増えている。大阪人の嗜好が変わってきたのだろうか。大阪のラーメン店はまだ少ないが、「安くてあっさり」のラーメンが大阪の味として定着していくのかもしれない。

(大阪経済部 大淵将一)

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