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オリックス、伸びる観客数 イベントや特典 臨機応変(ひと最前線)

球団、ファンクラブ情報活用

プロ野球のオリックス球団は昨季、観客動員数が176万人を超え、実数発表を始めた2005年以降で最多を記録した。パ・リーグ5位で低迷したチームをファンは見放さず、集客力が勝敗に大きく左右されない球団に変貌しつつある。背後には、ファン定着を図る球団の努力があった。

「一番のミッションはファンを増やすこと。まずは収益ではなく、ファンに楽しんでもらおう」。観客動員力で12球団の下位をうろついていた。11年12月にオリックス本社から出向した湊通夫(53)の仕事は明確だった。

何かにつけて「これをやる目的は?」と職員に問う球団専務は、同時に「お客さんとのコミュニケーション」を説いた。肝は、12年秋に本格稼働した顧客情報管理(CRM)システムだ。ポイント情報を集約してファンクラブ会員の属性や来場回数、場内の購買履歴などを把握し、行動や嗜好を突き止める。対面でのアンケート調査で顧客満足度と適当と考えるチケット価格を答えてもらい、潜在需要を球団内で共有した。

ここでまいた種が、2位という好成績と相まり集客増加に結実したのが14年。その過程で、データという宝の山の用途にファンクラブグループ長の緒方貴弘(33)は思案を巡らせた。「1カ月来場のない人はそのまま離れる」との分析から、足が遠のきかけた人にビール1杯無料の特典を告げるメールを配信。来場回数が前月を上回ればポイントを提供してメリットを訴える。「チームと一体感を持ってもらう」ために個人に働き掛けた。

個人の嗜好に合わせるため、ファンクラブ会員の種類も細分化した。年会費15万円を支払う客には選手と接するイベントなどを提供。CRM導入後の会員数は右肩上がりで、昨季は前年比約25%増の5万1千人。来場者の3割を会員が占め、動員を下支えした。

昨季は開幕4連敗で始まった。ホーム開幕3連戦も3連敗したが、動員は10万人を超えた。事業面の「開幕ダッシュ」は、中島裕之や小谷野栄一ら大物選手を補強したチームへの期待感に加え、いちげんさんをリピーターに変えてきた営業努力の成果といえる。プレーオフ進出の望みが絶えた秋は「勝利でポイント3倍、負けても2倍」のキャンペーン。あの手この手で落ち込みを防いできた。

CRM導入で先達のロッテや西武以上に動員できたのは、会員以外の観客の呼び込みが伴っていたからでもある。チケットグループ長の山本康司(41)はチームの不振を見て「8月が営業の正念場」と考えた。「オリ姫デー」と題した4月の女性向けイベントの好評に勢いを得て、男性向けのイベントを8月中旬に開催。首位ソフトバンクとは25ゲーム差があったが、ユニホームプレゼントが奏功し、2試合で約6万5千人を集めた。

会社員を狙って企業を回り、飲み放題付きチケットも売り込む。「週末はグッズのプレゼントやポイントを増やして集客を目指すが、平日は泥臭く足を使った営業が効く」。終盤まで多様な企画チケットを用意して来場意欲をかき立てた。

170万人を動員した14年の進撃で得た手応えを、昨季の盛況は確信に変えた。「チームと事業は両輪。(イベント開催などに)協力してくれる選手との相乗効果で今がある」と湊。もちろん一番の力添えはチームが勝つことだ。好況のスタンドを一層にぎわすフィールドの活況を心待ちにしながら、職員たちは球春の準備に追われている。=敬称略

(大阪・運動担当 渡辺岳史)

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