女子ラグビー 盛り上げろ 元日本代表ら、環境整備に奔走(ひと最前線)
スター選手 育成にトライ

2016/3/24 6:00
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昨年のワールドカップ(W杯)での日本の活躍以来、国内で続くラグビー熱。夏のリオデジャネイロ五輪では女子も7人制種目が採用される。関西にも、「男の世界」ラグビーの門戸を女子選手に開こうと奮闘する人たちがいる。

「女子にしっかりしたベースができれば、ラグビーの認知度はさらに進む」。2013年に誕生した追手門学院大学(大阪府茨木市)の女子ラグビー部。創部へ動いたのが元スター選手で同校客員教授の大畑大介(40)だった。

14年度の競技人口は男子の約10万人に対し、女子は約3300人。環境整備の遅れが目立つ。「20歳前後は力が伸びる年代なので」と、特に大学の受け皿が必要だと大畑は考えた。14、15年には大学女子7人制ラグビー交流大会を開催、スポンサー集めに奔走した。現在3回目を計画中。むかし快足バックス、いまは陰に陽に女子ラグビーを支えるあしながおじさんだ。

神戸製鋼で先輩だった大畑に口説かれ、元日本代表の後藤翔太(33)は同校の初代監督に。退社して任に就いた当初は何一つうまく運ばなかった。ボールを投げる、受けるの基本ができない。ラグビー経験者は半分しかいなかった。

練習メニューを一から作り直し、2年目からやっと軌道に乗った。昨年、大学女子の交流大会を制し、社会人チームを交えた20日の7人制全国大会で優勝。関西では一頭地を抜く存在になりつつある。

指導の肝は対話だと後藤は語る。「思いを伝えるのは簡単。選手の気持ちを理解しないと」。こちらのコーチングを選手がどれだけのみこんだかが分かりづらい女子の指導には独特の難しさがあるというが、頼もしい味方もいる。元女子日本代表の辻本つかさ(34)。まだ珍しい女性コーチとして後藤を助けるだけでなく、教員を務める系列の追手門学院高校ではより主体的な指導を任される。

現在の7人制女子代表は強化策が実ってリオ五輪出場を決めたが、女子不遇の時代を現役で過ごした辻本は優れた指導者と出会えない不幸を知っていた。学生時代、平日練習は1人が当たり前。代表合宿に行ってもコーチがいないことがあった。そんな来歴がある辻本だから、同校に誘われて迷わず引き受けた。

自己流の努力で「方向性を間違えた」現役時代を省みて、選手一人ひとりの足りない技術、必要な練習を見極める。自分も後藤に学びつつ、選手に「正しい努力をしなさい」と説く。

同校での代表OB、OGのスクラム結成より一足早く、神戸甲北高校(神戸市北区)ラグビー部監督の財田幸治(42)は09年に女子部門を開設した。きっかけの一つは現役時代の辻本がいた女子代表が同校で練習したことだった。代表さえ練習場が定まらない女子の窮状への同情。「女子なら代表選手を育てられるかも」との思い。代表と無縁の選手時代を過ごした財田を強い感情が動かした。

「ボールを持った鬼ごっこ」で初心者にラグビーの魅力を知ってもらう。けがの予防にも気を配る。女子でも相手を倒せるタックルのコツは後藤に教わった。おかげで退部した部員は1人もいない。兵庫県下で単独チームを組める高校は同校のみ。それでも財田が開催を主導してきた大会には、学校をまたいだ混合チームが参戦している。

リオ五輪代表候補に関西のチームの選手はいない。だが「未来の代表」を育てようと志すコーチは、確かに育っている。=敬称略

(大阪・運動担当 金子英介)

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