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進化続ける「カレーの街」大阪(謎解きクルーズ)

老舗・新顔…1000店競ルゥ 混ぜ合わせ系も台頭

日本の国民食ともいわれるカレー。発祥の地であるインドのカレーとは別物といっていいほど、日本で独自の進化を遂げた。なかでも大阪では、ほかの地域ではあまり見られないような色々な種類のカレーが味わえる。なぜ大阪のカレー店は変化に富んでいるのか、調べてみた。

◎ ◎ ◎

19日、大阪城公園に3500人超のカレーファンが集まった。目当ては当日限りの特別カレー。関西にある和洋中の約100の飲食店が集まってカレーを提供し、売り上げの一部を東日本大震災の復興に充てるイベント「立ちあカーレー」だ。

スッポンに鹿肉、タコ、サメなど、珍しい食材をカレーに使う。大阪市北区に住む男性会社員(27)は「見たことないカレーを色々と味わえて楽しい」とほほを緩める。

珍しいのはイベントの限定メニューだからではない。大阪の街を歩くと、チェーン店ばかりでなく、個人が経営するカレー店が多いのに驚く。どの店のカレーも工夫を凝らしたユニークなものだ。

大阪のカレーは、大きく3種類に分けられる。1つは「甘辛カレー」。1口目はフルーティーな甘さが口の中に広がるが、食べ進めるとじわじわと辛さを感じる。インデアンカレーや上等カレーが代表格で、大阪では古参派だ。

2つ目は「スパイス系カレー」。インドカレーから派生し、小麦粉を使わないサラサラしたソースが特徴だ。粗びきの香辛料をいくつも使って香りを引き出す。谷町4丁目や北浜、西天満に集中する。

3つ目は最近台頭している「スリランカカレー」だ。素材とスパイスのみで味を引き出すインドカレーと違って、魚介だしを使うのが特徴だ。食べ方も独特で、1皿にメーンのカレー、豆カレー、総菜など4~5種類を盛り、混ぜながら食べる。

京阪神エルマガジン社(大阪市)でカレー特集本を担当する永田生美さんは「作り手によって味が多彩で、いろんなジャンルのカレーが集まっているのが様々な味を生み出す土壌になっている」と分析する。グルメサイト「食べログ」で全国20の政令指定都市のカレー店を検索すると大阪市は1032店(4月17日時点)。2位の札幌市の約1.7倍で、競争の激しさがうかがえる。

「大阪のカレー文化は他の都市より多様だ」。1日約6万人が閲覧する人気ブログ「Mのランチ・ディナー」のブロガー、M三郎さんは話す。「大阪のカレー店は他店のいいものをすぐに取り入れ、自己流にアレンジする」。例えば北浜のカシミールが豆腐を具材に使うと、いろんな店がまねして使い始めた。M三郎さんは大阪人の気質を「せっかち、ダシ好き、新しもの好き」と分析し、「カレーは3つの条件を満たす」と説く。

甘辛カレーはルウを事前に大量に仕込むので、注文から提供まで約1分という早さが売り。スパイス系カレーはガツンとくる風味に従来のカレーには無い目新しさがある。スリランカカレーはスパイスの裏にカツオだしのようなコクを感じる。いずれもM三郎さんの3条件に合う。

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カレー総合研究所(東京・渋谷)の井上岳久所長は「カレーを革新する力は大阪が全国で1番強い」とみる。味の独創性、競争の激しさはほかの都市より一歩先を行くという。そもそも大阪はカレー粉の国産第1号が生まれた街だ。薬問屋として創業したハチ食品(大阪市西淀川区)が調合技術を生かして1905年に売り出した。固形のルウを全国に広げたのはハウス食品、初のレトルトカレーは大塚食品と、日本のカレーの歴史には大阪発祥の企業が深く関わっている。大阪とカレーとの付き合いは他都市よりも長く、深いといえそうだ。

江戸時代、天下の台所として全国から生活物資が集まった大阪。新しいモノを受け入れる懐の深さが、1皿のカレーにも表れていると感じた。

(大阪経済部 鈴木大祐)

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