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関西「納豆だけはよう食わん」?(謎解きクルーズ)

健康志向で注目/ダシ文化に合った製品 徐々に市民権

購入額は増加傾向

「納豆だけはよう食わん」という関西出身者は多い。納豆は関西人の嫌いな食べ物の代表格ともいえる存在だ。しかし、コンビニエンスストアには納豆巻きやパック入り納豆が普通にあるし、スーパーには何種類もの納豆が並ぶ。本当に嫌いなのだろうか。

総務省の家計調査によると、全国の都道府県庁所在市で納豆の購入額が最も少ないのは大阪市の年1914円。46位の和歌山市、40位の神戸市など、関西の2府4県すべてが全国平均を下回る。あまり食べないとはいえそうだ。

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「関西で最初に納豆を売り出したのは当社です」と話すのは、関西スーパーマーケットの山田源さん。30年ほど前、北関東のメーカーが売り込んできた。「売れるはずない」と断ったが、粘りの交渉に折れて店に並べたという。

半年ほどはほとんど売れず、1店当たりの販売数は1日5個程度。賞味期限切れの品を大量に廃棄する日々だったが、徐々に売り上げが伸びた。小さな売り場にとどめず「初めからショーケースの上から下まで使い売り出したことで、来店客に知られるようになった」(山田さん)。

スーパーの店頭には常時20種類以上が並ぶ(吹田市の関西スーパーマーケット江坂店)

当初は転勤族などが買っていたようだが「健康にいい」などとテレビ番組で紹介され、地元の人も手に取るように。今では1日に150個以上を販売する。売上高は関西の食卓に欠かせないちりめんじゃこに匹敵するという。

大阪で作る納豆もある。小金屋食品(大東市)は62年、山形出身の創業者が「『納豆不毛の地』で納豆を広めたい」と始めた。なじみのない人はまずにおいを敬遠する。発酵時間を調節し「においを抑えながら、うまみのもとである糸引きはしっかりした納豆を作った」(2代目社長の吉田恵美子さん)。

たれはダシをきかせ、薄口しょうゆで仕上げた。「関西の人はつゆだく感を好むので一般的な納豆よりたれを多めにしている」(吉田さん)。

2014年春には同社の「なにわら納豆」が大阪の特産品「大阪物(もん)名品」に認証された。大阪で作る本格的な納豆として少しずつ口コミで広がってきたという。

京都市北部では餅で納豆を包んで食べる習慣がある

そもそも納豆のルーツは関西という説もある。京都市北部の京北地域では、冬になるとゆでた大豆をわらで包んで発酵させる「わらつと納豆」を作る習慣がある。「お正月にはお雑煮の代わりに、家でついた餅に納豆を包んだ『納豆もち』を食べる」(山国さきがけセンターの草木久美子さん)といい、普段から納豆をよく食べるそうだ。

当地の常照皇寺には「山国納豆」の木版や納豆が描かれた絵巻物が保存されている。古くからこの地で作っていたのは確かなようだ。京北地域の納豆文化に詳しい植田康嗣さんによると「源義家が馬のエサの煮豆を俵に詰めて移動中、偶然納豆になったのを発見したといわれている」。水戸や会津、仙台、横手など義家が奥州攻めの際に通ったルートで納豆食が盛んなのは「京北から納豆文化が広められた証拠」(植田さん)。

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発祥が関西なら、なぜ現在は嫌われているのか。食の嗜好などを研究している武庫川女子大学の藤本憲一教授に聞くと「関東では冬の保存食として納豆が日常食になったが、比較的温暖な関西ではさほど重視されず根付かなかったのでは」と分析する。

関西の納豆購入額は少ないが、過去30年間の伸び率を見ると大阪市は3倍、和歌山市は2.9倍と全国平均の2.1倍を大きく上回る。「食の嗜好のほとんどは習慣によるもの」(藤本さん)という。嫌いなのは食べ慣れないから。もう数十年すれば、関西でも北関東や東北並みに納豆を食べるようになるかもしれない。

(大阪経済部 小国由美子)

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