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高い技術、医療で開花 医工連携 中小の挑戦(1)

軌跡

ものづくりの技術を医療現場で生かす医工連携。地盤沈下する関西経済の新たなリーディング産業と期待される。その隠れた主役が異業種の中小企業だ。培った技術力を生かそうと新分野に挑む。

「ドクターのニーズを形にした」。工作機械の山科精器(滋賀県栗東市)の大日常男社長は、2011年に内視鏡手術の処置具を大阪大学と共同で開発した経緯を話す。

切除手術で出血した部位の洗浄と吸引には高い安全性が求められる。同社はチューブを内視鏡の操作孔に挿入する世界で初めてという方式を採用。微細加工技術を応用してノズル先端の洗浄・吸引用の穴を直径0.4ミリと小さくし、生体組織を傷つけずに不要な血液や洗浄液だけを吸い込む器具をつくりあげた。

両者を結びつけたのは大阪商工会議所だ。国の「産業クラスター計画」に基づき、近畿経済産業局が03年に病院と製造業の情報交換を提言。呼応する形で全国に先駆け両者のマッチング事業を始めた。同事業で企業と医師の面談は、13年間で2000件を超える。

神戸市は1995年の阪神大震災後に掲げた復興プロジェクト「医療産業都市」が医工連携の支援も担う。推進役の先端医療振興財団は13年に専門家が同都市の進出企業に助言する仕組みを整備。これまで6つの商品化を支えた。

その1つ、八十島プロシード(大阪市)の臓器模型は胃や腸など臓器の形状や質感を精密に再現した。手術訓練などに使う。1937年の創業以来、一貫して手掛ける樹脂加工の技術を生かした製品だ。

同社は07年、神戸市の人工島ポートアイランドに開発拠点を設け医療分野に参入した。当初は1億円に満たなかった医療関連の売上高は5億円近くまで増えている。

京都では再生医療に焦点を当てた連携が進む。プラスチック部品の協和化成(京都府宇治市)の小型シャーレは、京都大学再生医科学研究所のアイデアを製品化した。複雑な形状に成型できる液状シリコンを使用。細胞を均一の大きさで培養し回収の手間も省く。「研究を大きく前進させる」(同研究所)武器だ。

両者を仲介した京都リサーチパーク(京都市)は09年に医工連携の枠組みを整備。協和については最初の2カ月間、専門家が両者の話し合いに毎回立ち会った。これまで7製品が生まれている。

東大阪支局長 石川正浩が担当します。

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