和食の醍醐味解きほぐせ、京大チームにスペシャリスト3人衆(ひと最前線)
健康効果 未来へバトン

2015/10/15 6:00
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「もう一度和食を見直そう」。今年1月に京都市で開かれた日本病態栄養学会。京都大学大学院医学研究科教授で学会長の稲垣暢也(57)は聴衆に呼びかけた。学会には医師や栄養士に加え、農学者や料理人ら千人近くが参加。和食の健康効果を検証し、国内外に発信する「和食宣言」を採択した。

京都大大学院の稲垣教授

京都大大学院の稲垣教授

2013年末、「和食」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。だしの「うまみ」や健康によいといった魅力に海外からも関心が集まる。だが地中海食などに比べると科学的な根拠に乏しかった。

農林水産省は昨年、日本食の魅力を科学的に裏づけるプロジェクトを公募。本命視されていた東京大学をおさえ、稲垣率いる京大チームに白羽の矢が立った。

リーダー格の稲垣は「栄養内科」を専門とする。京大には国立大では唯一の栄養内科がある。稲垣も栄養士と共に患者の栄養治療に取り組んできた。

一口に日本食といっても懐石からラーメンまで幅広い。今年8月、稲垣らは日本食の基本形を「ご飯、汁物、香の物、魚などのおかずで構成される1975年前後の家庭料理」と定義した。「当時は油の摂取量が少なく、最も健康的だろうと考えた」からだ。

15年度はマウスを使い、脂肪や塩分、だしの摂取量が腎臓や肝臓などの臓器にどう影響するかを調べる。16年度には京都市や滋賀県長浜市の住民数千人に日本食を食べてもらい、健康状況を測定する計画だ。

龍谷大の伏木教授

龍谷大の伏木教授

京大チームの強みは医学、農学、料理界から分野を超えて人材を集めた点だ。龍谷大学教授の伏木亨(62)は今年3月まで京大にいた。稲垣とは20年の付き合いがある。農学が専門で、なぜ油はおいしく感じるかといった味覚のメカニズムをマウス実験で研究してきた。

伏木らは最新の分析装置を使い、昆布やかつおだしを解析する。数百種類ある成分から、うまみを構成するのに重要と考える数十の成分を絞り込む。さらにプロの料理人が舌や嗅覚でおいしさに点数をつける。

「鑑定役」を担う高橋さん

「鑑定役」を担う高橋さん

「鑑定役」を担うのは高橋拓児(46)だ。京都の料亭、木乃婦(きのぶ)の3代目。伏木に誘われて2年前に京大大学院に入学した。料理をおいしいと感じるときに嗅覚や神経がどう活動するかを調べている。「ミシュランのようなおいしさの基準値をつくりたい」と意欲的だ。

京大以外にも北海道大や九州大など全国の研究者が加わる。成果を上げるには関係者の団結力が重要だ。昨年10月、京大で約40人のメンバーが初めて顔合わせする会合が開かれ、稲垣は「異分野の力を融合させよう」とあいさつ。伏木も「(所属は違うが)我々は1つのグループ。力を合わせて頑張ろう」と応じた。

目指すのは健康でおいしい日本食を次世代に伝承すること、そして海外への普及だ。今年6月、イタリアで開かれたミラノ国際博覧会(万博)ではイタリア語で日本食の魅力を紹介する映像を上映。今夏には京都の料理人が日本料理について記述した教科書をイタリア語や英語で出版した。

研究期間は17年3月までの3年間。20年には東京五輪を控え、日本の食文化を世界にアピールする絶好の機会となる。3人の挑戦は時間との戦いになる。=敬称略

(大阪経済部 鈴木健二朗)

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