2019年3月21日(木)

敵もうなるナニワの味 万博記念競技場の「美味G横丁」(未来への百景)
大阪府吹田市

2014/11/11 6:30
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ほぼ月に2度、大阪府吹田市の万博記念競技場の脇に祭りのにぎわいが訪れる。

ガンバ大阪の試合前、万博記念競技場周辺の出店に並ぶ人たち(大阪府吹田市)

ガンバ大阪の試合前、万博記念競技場周辺の出店に並ぶ人たち(大阪府吹田市)

Jリーグ・ガンバ大阪の試合に合わせ、約20店の飲食店が味を競う。「美味G横丁」と書いて「おいじい」と読ませるこの横丁、繁盛ぶりはリーグ有数だ。

大阪・道頓堀の有名たこ焼き店から漂うつくりたての香りに誘われて、にぎやかに列をつくる女性たち。お好み焼きとビールを手に父親は我が子とのひとときを過ごす。サッカーとグルメと憩いの時間が三位一体をなしている。

その昔、この競技場での観戦に「おいしい」など期待できなかった。会場内で売られたのは冷凍もの。「これ、揚げてるやん。"たこ焼き"ちゃうで」と不服を表明し、カップめんを持参する人もいた。「サッカー以外の楽しさも充実させないと、サッカーを見に来る層は広まらない。勝利の喜びは保証できなくても食べ物は工夫しがいがあるはず」。ガンバ大阪事業本部副本部長の伊藤慎次さんは思案した。場内の営業は別業者の管轄でクラブは手をつけられない。そこで目をつけたのが最寄りのモノレール駅から会場までの100メートルほどの通り道。ここなら公園事業者に場所代さえ払えばクラブの裁量で興行ができた。

大阪・ミナミの「くいだおれ太郎」が引退した2008年。伊藤さんの掛けあいで、ガンバのユニホームを着た太郎が万博にやって来た。豪華ゲストを迎えて出店4店が並んだのがことの始まりで、今では「門前町」のにぎわいに。年間1億3千万円の売り上げを生む。

箕面市のフランス料理屋があり、豊中市の人気お好み焼き店がある。地元と手を携え、ともに栄えようとするクラブの理念がこの横丁に根付いている。日本でもサッカーが文化として根を下ろしつつあるのをみることができる。

横丁は1年後の引っ越しが決まっている。来年秋、隣駅近くに4万人収容の新スタジアムが完成するのに合わせ、新しい市が立つことになる。「コンビニは毎月3000品目を入れ替えるとも聞く。我々もスタジアムを自分の家に置き換え、あったらいいなと自分が感じるものを形にしたい」と伊藤さん。河岸(かし)は変われど、興行の精神は受け継がれる。

文 岸名章友

写真 伊藤航

<取材手帳から> 横丁の味は品ぞろえが豊富で、1点500円ほどで買えるものばかり。万博競技場の試合はこれが楽しみというアウェーサポーターも多い。ガンバの遠征について行き、アウェー会場に出店して好評を博す店もある。腹が減っては応援できぬのはサポーターの敵味方なく、みな同じ。
 本店は行列待ちでも、横丁の出店ならお望みの品を味わえることもある。人気のチーズケーキ店ではキックオフ前に注文しておき、帰り際に新鮮なものを持ち帰るといった裏技も。こうした「スタジアムグルメ」は各地方クラブも力をいれており、いまやJリーグの風物詩になった。

<カメラマン余話> お好み焼き、空揚げからケバブ、フレンチまで、食欲をそそる匂いが競技場周辺に漂う。どの店にも長い行列だが、にぎわいは試合前の1~2時間だけ。始まると、ばったり人がいなくなった。店じまいをする焼きそば店に駆け込んで撮影後の空腹を満たした。

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