2019年9月19日(木)

上方落語復興 米朝の足跡 没後2年、展覧会に700点

2017/2/5 6:00
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2015年3月に亡くなった落語家、桂米朝に関する資料を紹介する特別展「人間国宝・桂米朝とその時代」が兵庫県立歴史博物館(兵庫県姫路市)で開催中だ。米朝に関する展覧会は生前に5回開催されたが、今回は没後初で過去最大規模。直筆原稿や口演記録など展示品は約700点に上る。戦後、存亡の危機にひんした上方落語の復興に尽くした足跡を、昭和史とともにたどることができる。

ボランティアスタッフや報道陣に展示物を解説する中川渉氏(兵庫県姫路市の県立歴史博物館)

ボランティアスタッフや報道陣に展示物を解説する中川渉氏(兵庫県姫路市の県立歴史博物館)

展示は米朝の生い立ちから晩年まで、時代に沿ってたどる。手紙や日記、公演パンフレットなど、残された資料の膨大さには驚くばかりだ。長男で弟子の桂米団治は「筆まめで、自分のためというより次の時代の人のために書き残していたのだと思う」と話す。

米朝の最大の功績は上方落語のネタの保存と継承に努めたことだ。時代に合わなくなったり断片的にしか伝わっていなかったりする噺(はなし)を再構成して復活させた事例は数多い。代表作「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」はそうしたネタの1つ。文の家かしく(後の笑福亭福松)から「地獄八景」の稽古をつけてもらったことを記したネタ帳も展示されている。

最大の目玉は、2016年1月に亡くなった桂春団治の遺品から見つかった米朝の直筆原稿だ。1959年3月に三代目春団治を襲名するにあたり、持ちネタが少ない春団治のために米朝がいくつかのネタを稽古したという話が伝わっているが、その「証拠」が出てきたのは初めてという。

落語研究家の小沢紘司氏は「一般的に落語は口伝えで継承されるが、稽古時間が足りずに手紙で伝えることになったのだろう。おかげでこのような貴重な資料が残った」と話す。

演目は遊び好きの商家の若旦那とその父がお茶屋で鉢合わせする滑稽噺「親子茶屋」。「低声で」「ト、大きな声を出す」など演じる際の心得や鳴り物のきっかけなどが記され「自分のやりかたを全部書いている」(小沢氏)。原稿用紙の末尾には「桂春団治御師匠様」とあり、年下の春団治に米朝が敬意をもって接していた様子をうかがわせる。

米朝の師匠、四代目桂米団治が死の8カ月前に送った手紙も興味深い。「貴君が私の志を継いで、私の止まった處(ところ)から更に前進して呉(く)れることを切望するのは当然だ」と、後継者である米朝に上方落語の将来を託す思いがつづられている。

米朝が春団治に贈った「親子茶屋」の直筆原稿

米朝が春団治に贈った「親子茶屋」の直筆原稿

実は展示を担当した学芸員の中川渉氏は米朝の三男。専門は考古学で、これまで落語との関わりは多くはなかった。埋蔵文化財の調査担当から歴史博物館への異動を告げられた直後に米朝危篤の報を受け、赴任後初めて手掛けるのがこの特別展という。「親の展覧会をするなんてありえない話だが、巡り合わせと覚悟を決めた」と中川氏。「準備期間は、自分が知らない古い時代の父と向きあう時間だった。よくこれだけの仕事を父はできたな、とつくづく感じた」と振り返る。

館内には大阪大の石黒浩教授らが開発した米朝そっくりのロボット「米朝アンドロイド」も展示され、2月12日、3月19、20日には小噺を実演する。会期中、弟子らによる「米朝一門DNA落語会」などのイベントも予定している。

米朝が亡くなって2年がたとうとしているが、故人の功績は今も色あせていないと感じられる展示会だ。

(大阪・文化担当 小国由美子)

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