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もっと関西 歌舞伎「晴の会」、四谷怪談に挑む 古典の大作 若手が奮闘(カルチャー)

2017/8/4 17:00
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上方歌舞伎の若手俳優による「晴(そら)の会」が6日まで、近鉄アート館(大阪市阿倍野区)で「東海道四谷怪談」を上演中だ。過去2回は落語を題材にした新作歌舞伎だったが、3回目にして初めて古典の大作に挑む。普段は補助的な役を勤めることの多い若手たちが、初めての大役に奮闘している。

片岡仁左衛門(右)の指導を受けて稽古に励む伊右衛門役の片岡松十郎(左)ら(7月28日、大阪市浪速区)

片岡仁左衛門(右)の指導を受けて稽古に励む伊右衛門役の片岡松十郎(左)ら(7月28日、大阪市浪速区)

「お岩さんは正座すると健康そうに見える。足を崩して」「そのセリフはもっとびっくりした感じで」

7月下旬、監修を担当する片岡仁左衛門や片岡秀太郎らが見守るなか、大阪市内の稽古場で立ち稽古が行われた。若手俳優たちの一挙手一投足に細かな指導がなされ、セリフの一つ一つについても、声のトーンや間の取り方、言葉に込める感情などが注意された。

晴の会は松竹が開いた上方歌舞伎塾の第1期生である片岡松十郎、片岡千壽(せんじゅ)、片岡千次郎が2015年に結成。一般家庭出身の彼らが主役を勤めて芸を磨く狙いで、第1回の公演は舞踊と上方落語の「宿屋仇(がたき)」をもとにした新作「浮世咄一夜(ばなしひとよ)の仇討(あだうち)」を上演した。16年は同じく上方落語「東の旅」がベースの新作「伊勢参宮神乃賑(かみのにぎわい)」で、同期の片岡佑次郎、片岡りき彌(や)が加わった。

新作は出演者が限られ、大がかりな舞台装置を組めない近鉄アート館の狭い空間でもできる芝居をと工夫してのこと。だが、歌舞伎俳優としての芸を身につけるには古典が欠かせない。過去2回の公演で観客への知名度も高まってきたことから、満を持して古典の名作に挑戦することになった。

「新作は(役者の)キャラに合わせて書かれていたので役づくりではさほど苦労しなかったが、古典では決まった役を演じる難しさがある」と千次郎。今回演じるのは、お岩の妹お袖に横恋慕する中間の直助だ。小悪党だが愛嬌(あいきょう)も必要な役どころ。お岩役の千壽は「大役だけにプレッシャーが大きい」と明かす。毒によって顔半分が崩れたお岩が髪をすく「髪梳(す)きの場」などしどころの多い役だが、「段取りよりも、心の動きを表現するのが難しい」。

民谷伊右衛門を演じるのは松十郎。外見は二枚目で性根は悪人という歌舞伎の役柄「色悪」の典型だ。出世に目がくらみ、お岩を捨てて他家に婿入りするような冷酷非道な人物だが、魅力的に演じなければならない。指導するのは南北作品を得意とする仁左衛門だけに「旦那(仁左衛門)のお役に少しでも近づきたい」(松十郎)と力を込める。

「東海道四谷怪談」は江戸後期に活躍した鶴屋南北による怪談の傑作。歌舞伎になじみのない人でもお岩の幽霊と言えば通じるほどよく知られる。忠臣蔵の外伝として描かれ、塩谷(浅野)家の浪人、民谷伊右衛門とその妻お岩を中心に、お岩の妹お袖とその夫与茂七、お袖に横恋慕する直助ら様々な人物の思惑が入り乱れる群像劇だ。

全編通しで上演すると6~7時間かかるため、通常はお岩が毒を飲まされて容貌が崩れる「伊右衛門浪宅の場」などを抜粋して上演することが多い。今回は一部を講釈師が語る形にして時間を短縮し、与茂七が伊右衛門を討つラストまで上演する。台本の改訂を手掛け、講釈師役も勤める千次郎は「最後の場面がないと浮かばれない。ダイジェストにならないよう、物語を伝えることを心がけた」という。

上演時間は休憩を挟んで3時間ほどと過去2回よりも30分ほど長くなった。出演者には上方歌舞伎塾2期生の片岡當史弥(としや)、中村鴈治郎一門の中村翫政(かんせい)のほか、ベテランの片岡當十郎(とうじゅうろう)が新たに加わる。パワーアップした「晴の会」から目が離せない。

(大阪・文化担当 小国由美子)

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