2017年11月24日(金)

現代美術、極限の身体性追求 肉体ぶつけ合うパフォーマンス集団

2016/3/6 6:00
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 肉体を激しくぶつける関西のパフォーマンス集団が脚光を浴びている。近年の現代美術はコンピューターを駆使し、仮想空間を題材にする作家が増えた。その反動として人間の身体性を見直す動きがあり、肉体の限界を試すようなパフォーマンスは批評性に富んだ表現として注目される。

大量のゴムチューブを使うMuDAの稽古風景(京都市中京区)

大量のゴムチューブを使うMuDAの稽古風景(京都市中京区)

 2月末、京都を拠点に活動するパフォーマンス集団「MuDA(ムーダ)」の稽古場を訪れた。1人が壁につないだゴムチューブを引っ張りながら走り出す。ぴんと伸びたチューブに1人また1人と体をぶつける。もみくちゃの6人は互いを引き剥がし、床に倒れてはまた立ち上がる。

 ダンサー・演出家のQUICK(クイック)を中心に2010年結成。パフォーマーのほか、映像、美術、音響の担当者ら約15人が参加する。クイックはもともとブレイクダンスをしていたが「派手な動きを求めるのは上っ面だけと感じた。人間の根源的な行為をやりたくなった」と振り返る。

 パフォーマンスは押し合いへし合いする「せめぎ合い」、勢いをつけて倒れ込む「反り倒れ」などが基本だ。特に「反り倒れ」には強い思いを込めた。「人は倒れても倒れても立ち上がることを表現したい。僕たちは立ち上がるために倒れている」

 今月5、6、12、13日にクリエイティブセンター大阪(大阪市住之江区)にあるスペース「BLACK CHAMBER」で公演・展示する。ゴムチューブを使うのは「人でもモノでも負荷をかけると反発するエネルギーが生まれる。それを見せたいと思った時にゴムがしっくりきた。高尚な理論ではなく、自分たちの体に合う」とクイック。

 06年に塚原悠也と垣尾優が結成したcontact Gonzo(コンタクトゴンゾ)は大阪が拠点。体をぶつけ、ビンタやゲンコツを食らわせる。山の斜面を滑る映像、果物を身体にぶつける写真なども発表。13年には写真家のホンマタカシと舞台作品を共同制作した。

 現在メンバーは4人。もともとコンテンポラリーダンスなどを研究していた塚原は「規律のあるリズムに正確に合わせるのが美学のダンスで、エラー(ズレや間違い)とは何か考えてきた。その延長がゴンゾ。ダンスの構造を崩したい」。

 演者の中に水入りのペットボトルを投げ入れたり、ビンタしながら使い捨てカメラで写真を撮ったりする。「小道具はエラーを誘発する装置。エラーが起きると人はどう反応するか、エラーとはそもそも何かを探求している」

 26、27日に京都府立府民ホールアルティ(京都市上京区)で音楽家の足立智美と共演する。「京都国際舞台芸術祭 2016 SPRING」(5~27日)のプログラムの一つ。会期中に地元の子供らとワークショップを開き、子供たちは本番の舞台にも上がる。

 ネットの普及で現代美術の表現も大きく変わった。大阪電気通信大学の原久子教授は「同時代に激しい肉弾パフォーマンスが相次ぎ出てきた意義は大きい」と身体性を前面に出す表現に注目する。その上で「ムーダは倒れ、起き上がる反復行為も、その精神も極めてプリミティブ。ゴンゾは他のアーティストと積極的にコラボし、ダンスの構造や音楽との関係性などを意識しながら、それらの枠にとらわれない魅力がある」と指摘する。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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