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手作り舞台で伝う人情味 劇団「伽羅倶梨」

35周年で記念公演

大阪市の老舗小劇団「伽羅倶梨(からくり)」が結成から35周年を迎え、15~18日、活動拠点にしてきた「KARAKURIスタジオ」(浪速区)で記念公演を開く。人情味あふれるほのぼのとした作品で知られるが、今回の新作は初めて悪役が登場し、新境地をうかがわせる。佳境を迎えた稽古とともに、劇団員が手作りで設営する舞台セットの仕上げにも余念がない。

公演直前の仕上げの稽古が進む。バックには舞台セットになる建材が並ぶ(大阪市浪速区)

けいこ場であり、本番の舞台にもなる「KARAKURIスタジオ」は木津川沿いの町工場や倉庫が立ち並ぶ一角にある。1階は板金塗装と製材の工場、2階がスタジオだ。「声の大きさはあと5倍でいこう」「寄り添うようにあと一歩前に」「もっと自分から動いてテンポ良く」――。本番さながらの稽古で、劇団代表で脚本・演出も手掛ける徳田尚美の声が響く。

伽羅倶梨は1980年9月、劇団群狼、天野塾といった小劇団が集まって結成された。旗揚げ公演は81年4月。故天野衡児作・演出のミュージカル「反逆児」だった。85年には地域文化への貢献が認められて、大阪市から表彰された。近年は幼稚園を回って公演する「キッズシアター」、ドラマのワークショップ、研究員の育成など活動の幅を広げている。

今回上演する「ラストダンスは永遠に」は徳田の23作目のオリジナル作品だ。リゾート開発やホテル経営などを手広く展開する不動産会社のやり手女社長に一癖も二癖もある有象無象が群がる。徳田作品では初の悪役として、訳ありの過去を引きずる「殺し屋」も出てくる。

これまでのハートウオーミングな舞台とはやや味わいが異なる。心の影や欲深さも描き出し、人間を多面的にとらえた。そして困難から立ち上がる家族のつながりや普遍的な愛を高らかにうたいあげる。「いつもと違うテイストにチャレンジしたかった」と徳田。初の悪役を演じる創設メンバーの一人、岩本正治は「悪役をやってみたかった。楽しみ」と意気込む。

日常のふとした瞬間を切り取り、コメディータッチで描く「ハートフルコメディー」が持ち味。キャッチフレーズは「明日へのビタミン剤」だ。研究生を含め13人の小所帯だが「伽羅倶梨をみると元気がもらえる」と根強いファンに支えられてきた。今年、ファンクラブに当たる応援隊が9人で発足。公演の宣伝や炊き出しなどを手伝ってくれる。

伽羅倶梨のもう一つの見どころは劇団員自ら作り込んだ舞台装置だ。今回は大金持ちの屋敷のリビングルームが舞台。彫刻を施したドアや、しゃれたインテリアなどを団員総出で作り上げる。殺風景な町工場の倉庫が、2週間ほどで「豪邸に早変わりする」という。

これまでも、この場所に寂れた駅舎や経営立て直しを迫られる旅館などを設け、様々な舞台に変えてきた。幕で覆って、いすを並べれば定員100人弱の立派な小劇場が出来上がる。もっとも、工場の2階だけに空調が十分ではなく夏は暑く、冬は寒さがこたえる。そのため、公演は春と秋の年2回しか開けない。

劇団名は、からくり人形のように「仕掛けを作ってビックリさせてやろう」といういたずら心に由来する。徳田は「35周年を機に、ファンをいい意味で裏切りたい。新境地を開拓できればいい」と節目の晴れ舞台に力を込める。

(シニア・エディター 泉延喜)

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