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本音の落語で大舞台へ 落語家 桂春蝶さん

フェスティバルホールで独演会

明るく華のある芸風で人気の若手落語家が来年2月7日、フェスティバルホール(大阪市)での独演会に挑む。オペラや洋楽の大物の公演などに使われる同ホールで、上方落語家が独演会を開くのは初めて。芸能生活20周年を記念し、持ち味の「本音の落語」を大観衆に伝えようと意気込む。

■人生に裏付けられた噺を語りたい

関西屈指の名門ホールへの登場は今春、制作会社から企画を持ちかけられた。一般的に落語会は1000席以下の小ぶりな会場で開く。2700席の同ホールで過去に独演会を開いたのは東京の人気者、立川談春しかいない。「打診されて震えたけれど『やらせてください』と即答した。周りに『早すぎる』とも言われたが、話をもらえるうちが花」と晴れやかな表情をみせる。

真っ先に決めた演目がある。夫婦の情愛を描いた人情噺(ばなし)の古典「芝浜」だ。魚屋夫婦は貧乏暮らし。ある夜、酔った夫が大金入りの財布を拾うが、地道に働いてほしいと願う妻は財布を隠し、夢だと夫を言いくるめる。夫が成功を収めた年の大みそかの晩、妻は真実を打ち明けて謝罪する。

元は江戸が舞台だが、大坂の魚屋が江戸に越してきた設定に変えるという。自身も3年前、活躍の場を広げるため東京に移った。各地の巡業もあり、妻やまだ幼い子供2人と1カ月間以上会えないこともザラ。妻は嘆くでもなく「あなたに任せた」と笑う。その姿が芝浜に重なる。

「信じること、許すこと、待ち続けること。これって一番難しいと思う。『ひとつ私の心をくみ取ってくださいな』という嫁さんの情を、高座でもにじませたい」

父は二代目春蝶。いわゆる2世だが、落語家を志したのは父が亡くなってから。なかなか芽が出ず、デビュー後10年は仕事がなかった。「缶ジュースも買えないほど貧乏だった。自信を失い、ふてくされていた」と振り返る。

運良くテレビのレギュラー出演が決まり「話す楽しさ」を思い出しかけた頃、大先輩、桂吉朝の一言で芸への取り組み方が変わった。「春蝶にしかわからん笑いの世界はあるか? それを落語に入れなさい。今ならまだ間に合うで」

くすぶっていた意欲に火が付いた。「皆と同じではだめ。小さくまとまっている場合じゃない」。果敢に新作に挑み、古典も構成から練り直す。大ネタ「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」は亡き父と地獄で対面するアレンジを加え、真骨頂を発揮。父に毒づいて客席を笑わせ、生前はかなわなかった落語家として頑張る姿を見せる場面で、ほろりとさせる。

落語を「自分の体温に近づけるのがこだわり」だと話す。けんか別れした夫婦の仲を息子が取り持つ人情噺「子はかすがい」なら息子を娘に変え、自分の境遇に引き寄せる。「本音が人を感動させる。だから人生に裏付けられたものを語りたい」。上方のホープはニッと笑った。

(大阪・文化担当 佐々木宇蘭)

 かつら・しゅんちょう 1975年大阪府吹田市生まれ。93年、父の二代目春蝶の葬儀で参列者から「お父さんの落語に生きる元気をもらった」と言われたのをきっかけに落語家を志す。94年、三代目桂春団治に入門。2009年、三代目春蝶を襲名。10年、演劇の「桂春蝶劇団」を旗揚げ。11年から東京に居を移す。13年、自身が脚本を手掛ける新作落語シリーズ「落語で伝えたい想い」を開始。14年、大阪市の「咲くやこの花賞」受賞。

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