若い人材育て次代へ継承 映画監督 河瀬 直美さん
なら国際映画祭で「総監督」

2016/9/4 6:00
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奈良市出身の映画監督、河瀬直美(47)が17~22日、同市内で開かれる「なら国際映画祭」で総監督ともいえるエグゼクティブディレクターを務める。資金不足で一時開催が危ぶまれたこともあり、テーマに「つながる」という言葉を使った。地域や自然とつながり、次代への継承をアピールする。

■古都からの世界発信に意義

映画祭会場の春日大社で意気込みを語る=浦田晃之介撮影

映画祭会場の春日大社で意気込みを語る=浦田晃之介撮影

なら国際映画祭は2年に1度開かれ今年が4回目。過去3回のオープニングは文化会館などが会場だったが、今回は春日野園地という春日大社近くの緑豊かな広場を使う。境内の一部も会場だ。今年は20年に1度社殿の大規模修繕を行うご造替の年でもある。

「映画祭では映画を奉納し神様と心をつなぐ。春日大社には舞楽や猿楽を奉納する祭典があるが映画も同じ芸能。ご造替には次代への継承の意味があり、映画作りも次代につなぎたい」

映画作りの若い世代が育っていないと危惧する。「カンヌなど国際映画祭の受賞が続かない。ドキュメンタリーの父、ロバート・フラハティゆかりの米国のセミナーにゲストで呼ばれたが、中国人や韓国人はいるが日本人の姿がない」

今年は約20のプログラムを用意。内外の若手監督の作品紹介や座談会、子供向け上映など若い世代を意識した企画が目立つ。特に力を入れるのは自身と俳優の別所哲也がマイケル・サンデル教授のように講義する"白熱教室"だ。日本の若手監督たちを前に2人が映画について熱く語る。「彼らの思いや不満。日本映画界の課題を引き出したい」

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で受賞歴のある上野遼平ら12人が参加予定。「小説や漫画をリメークする監督はいるが、オリジナル脚本から作り上げる監督を育てたい。オリジナル作品の公開、配給を支援する仕組みも考えたい」

多摩美術大学、大阪芸術大学などの学生が制作した9作品も上映する。「すべての作品に英語字幕を付ける。私の初期の作品が海外で評価されたように、外国人にも見てもらいたい」

毎回好評の海外の若手監督が奈良で制作する企画は、キューバのキンテラ監督によるニホンオオカミを巡る物語「東の狼(おおかみ)」を上映。発電用の自転車をこぎながら見る子供向け企画は「トムとジェリーの宝島」など2作品が楽しめる。

「カンヌ国際映画祭とパートナーシップを結び、連携を深めていく」。2007年に「殯(もがり)の森」でカンヌのグランプリを受賞。現在、短編部門などの審査委員長も務める。4本の招待作品を上映し、学生の優秀作をカンヌの学生部門に推薦することも検討する。

なら国際映画祭はどんな方向を目指すのか。「当面は若手監督を輩出する映画祭を目指す。釜山やロッテルダムが有名だが『なら』も広めたい」。将来は「パリではなく避暑地カンヌだから魅力があるように、東京ではなく古都奈良からの世界発信に意味がある」。世界的映画祭に、との思いは強い。

避けて通れないのが運営資金の問題だ。今春、奈良市が補助金1260万円を全額カットし、一時開催が危ぶまれた。寄付や協賛金を集めて運営資金4500万円を何とか工面したが、次回の保証はない。

「公的助成、寄付・協賛金、チケット収入を3分の1ずつにすると良いかも」。現在は寄付・協賛金6割、公的助成3割、チケット収入1割。寄付・協賛金は景気に左右されやすく、国や自治体は財政難で助成を絞りがち。一つに依存するとリスクが高いが「3本足で支えれば安定する」とみる。

子供のころ東大寺や春日大社周辺で祖母とお弁当を食べ、探検ごっこで遊んだ。「奈良のまち全体が映画館になる映画祭。ご造替のように千年以上続けたい」

(奈良支局長 浜部貴司)

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