2019年6月19日(水)

大阪にも国会議事堂がある?(謎解きクルーズ)
街のシンボル、いちびり精神 遊び感覚を建築に

2015/2/7 6:30
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大阪で生まれ育った記者は真面目に「日本の中心は大阪やで」と思っている。東京への対抗意識というより、もっと根が深い大阪人のアイデンティティーの問題かもしれない。そんなことを考えていたら、国権の最高機関である国会議事堂が大阪にもある、という噂を耳にした。気になって現地に足を運んだ。

国会議事堂を模した大阪工大のキャンパス(大阪府枚方市)

国会議事堂を模した大阪工大のキャンパス(大阪府枚方市)

大阪府枚方市にある大阪工業大学枚方キャンパス。情報科学部の建物は一見すると国会議事堂と区別が付かない。6階建て、高さ約60メートル、幅約180メートル。本物の国会議事堂が高さ約65メートル、幅約210メートルだから、ほぼ近い大きさだ。

遠くからでも目立つが、近づくとすごい迫力。内装は普通の学校と変わらない。教室や教授室などがある。こんな立派な建物なら有意義な大学生活を送れそうだ。

国会議事堂

国会議事堂

そう思って学生に聞くと、「入学して最初に見たときは面白いと思ったけど、もう慣れた」とやや素っ気ない。

大阪工大などを傘下に持つ学校法人常翔学園広報室の西田太郎室長は「建設当時の理事長で参院議員を30年務めた藤田進氏の発案で、1996年に建てられた」と話す。「周辺では道案内するときなどに目印として使ってもらっている」と西田さん。

地域に広く浸透するようなシンボリックな建物にしようとの発想が動機になった。また、当時は東京一極集中是正のため、首都機能移転論が盛んだったことも建設の背景にあるという。

☆ ☆ ☆

ミカミ工業の「ホワイトハウス・イン・オオサカ」(大阪府東大阪市)

ミカミ工業の「ホワイトハウス・イン・オオサカ」(大阪府東大阪市)

数日後、今度は友人から「大阪にホワイトハウスがある」との情報が入った。驚いて向かったのは東大阪市。1908年創業の建材メーカー、ミカミ工業だ。米ワシントンの大統領官邸を模した荘厳な門構えと真っ白な外壁。庭には馬に乗った人の像が威厳たっぷりに立ち、細部へのこだわりが感じられる。

通りすがりの自営業の男性は「この辺りでは有名な建物。でも何の会社かは知らない」と話す。

ホワイトハウス(AP)

ホワイトハウス(AP)

84年、当時の三上雄太郎社長が米国好きが高じて建てたという。「かつてこの辺りは畑が広がっていたので、地元の人は驚いたのでは。建設時に当時のレーガン米大統領から届いた親書もある」と同社。

大きさは実物の3分の2ほど。かつては米大統領が代わるたびマネキンを使ったセレモニーを開いていた。2011年、介護用品などを扱うシーホネンス(大阪市)がミカミ工業の全株式を取得、子会社にして以降はやめており、「今後はセレモニーの予定はない」。

建設費は数億円。現在、内部は一般公開していない。一部は設計事務所向けのショールームとして活用している。

☆ ☆ ☆

なぜこんな大規模な模倣建築ができたのか。洋風建築などに詳しい神戸外国人居留地研究会の高木応光氏は「自治体や観光業者が有名な建物をまねた例は全国にあるが、個人の資産家が思いつきで建てるところが大阪らしい。(しゃれっ気のある)いちびり精神が背景では」とみる。

都市空間に詳しい大阪大学総合学術博物館の橋爪節也館長は大阪にある国会議事堂とホワイトハウスについて「『つくりものの伝統』という共通点がある」と指摘する。「大阪ではハレの日に昔話や有名な故事来歴にちなんだものを壮大に飾ってみせる祝祭の文化があった」と橋爪さん。そういえば記者も幼いころ、遊園地「ひらかたパーク」(枚方市)に出かけ、飾られていた光源氏や牛若丸らの菊人形を楽しんだ記憶がある。

建物を新しくする際に、人を驚かせようとする「いちびり精神」や、にぎやかに飾り立てる「つくりものの伝統」。昔からの大阪人気質がユニークな建築を生み出してきたのだろう。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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