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30年経てクリニック開設 ATR 花咲く基礎研究(4)

軌跡

1997年、米誌ビジネスウイークは生物に学んだ情報技術部門の研究機関で、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)を米スタンフォード大学などに次ぐ世界4位と位置付けた。有名な米ロスアラモス国立研究所は6位。発足からわずか11年での快挙だった。

脳内回路を調べる機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)

研究対象分野は発足当初の電気通信から脳情報科学や人工知能(AI)へと広がっている。今年2月、精神疾患を治療するクリニックを開設した。まだ臨床試験の段階だが「機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)」で患者の脳内回路を調べながら正常な状態に導いてゆく。事故で手足を切断した患者が失った箇所の痛みを訴えるといった症状の改善にも、薬や電気的刺激などを用いずに対応できる。

先日、米グーグルのAIが囲碁で世界トップ級のプロ棋士に勝ち越して話題になった。膨大なデータを高速処理する学習能力が勝因だ。だが人間は違う。幼児は数冊、絵本でライオンを見ただけで動物園の本物を認識できる。

ATR脳情報通信総合研究所の川人光男所長は「膨大なデータ処理を伴う手法で後追いしても勝ち目は薄い。少数サンプルで学習できるAIを究めれば世界と互角の戦いができる」と話す。関西経済連合会の大竹伸一副会長(NTT西日本相談役)は「ATRのAIはいいところを突いている」と高く評価する。

関西文化学術研究都市はATRが呼び水になって発展してきた。近年、JR祝園駅や近鉄・学研奈良登美ケ丘駅と学研都市を結ぶ路線バスは平日の朝夕、満杯になる。ATRの葉原耕平元副社長は語る。「基礎研究が実を結ぶまでに30年を要することをATRは期せずして実証した」

(この項おわり)

次回は「ランドセル成長物語」

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