におい立つ上方文化 浮世絵展相次ぐ

2015/5/31付
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関西で浮世絵の展覧会が相次いで開かれている。江戸時代に成立した浮世絵は、仏画のような高尚な画題ではなく庶民の生活に根付いた文化や風景を描いた。江戸で広まった浮世絵だが、様々な表現が楽しめる各展覧会を訪れると、奥深い上方文化が随所に息づいている。

大阪市立美術館(大阪市天王寺区)で開催中の「シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵―美の競艶」(6月21日まで)は喜多川歌麿、歌川豊国、葛飾北斎らの約130作品を展示する。浮世絵は量産できる木版画が一般的だが、同展は絵師が直接筆で描いた一点ものの肉筆画を集めた。

肉筆の魅力はなんといっても美人画で発揮される。しぐさや着物の文様などを版画に比べてより精緻に表現できる。

京都で活躍した浮世絵師、西川祐信の「髷(まげ)を直す美人」はみずみずしい透明感のある肌に、着物の線がすらりと流れる。担当の秋田達也学芸員は「女性の体がじゅばんに透ける表現には祐信の手腕がうかがえる。胸をあらわにしながら気品ある美しさを保つ」と解説する。

祐信のほかにも月岡雪鼎(せってい)、祇園井特(ぎおん・せいとく)ら上方絵師の作品が見られる。雪鼎のたおやかな姿態と、井特のリアリティーを突きつめた姿は対照的な味わいだ。秋田氏は「上方の美人画は、江戸と比べて肉筆が尊重されてきた。個性の描き分けや繊細な感覚を求めたからでは」とみる。

上方の浮世絵は役者絵が多かった。大阪で制作された浮世絵を中心に展示する上方浮世絵館(大阪市中央区)は、6月7日まで企画展「兼(かね)る役者たち」を開催中。

男性役者が演じる歌舞伎はもともと男役と女役は別だったが、江戸後期には男女の区別なく演じる役者が登場。その代表格が上方出身の三代目中村歌右衛門だ。約30点の役者絵から、当時の役者たちの幅広い演技が伝わってくる。

春好斎北洲(しゅんこうさい・ほくしゅう)や長谷川貞信が描く歌右衛門は大泥棒の石川五右衛門、敵討ちに燃える美女など多彩な役を演じている。高野征子館長は「容姿に恵まれなかった歌右衛門は、演技の工夫で人気を得た。男役と女役を兼ねることができたのは演技力の高さの証明」と語る。

子供も浮世絵の重要な画題だ。大津市の滋賀県立近代美術館で開催中の「江戸へようこそ! 浮世絵に描かれた子どもたち」(6月7日まで)は、子供が遊ぶ姿や寺子屋で勉強する日常などを描いた作品約300点を展示する。

江戸中期、多色摺(ず)りの浮世絵を大成したことで知られる鈴木春信は、美人画や子ども絵で祐信から大きな影響を受けたと考えられている。会期の前期で展示した「夏姿 母と子」は唐子髷(からこまげ)と呼ばれる幼児の頭髪など、子孫繁栄を願う図案がみられる。現在は「蚊帳の母と子」など母子の情愛が感じられる作品が並ぶ。

春信や歌麿が描く母の姿は日常の一場面を取り上げながら、はだけた着物やしなやかな肢体が艶っぽい。

山口真有香学芸員は「母子絵が人気だったのは子宝祈願に加え、女性像を鑑賞するに当たり、あからさまな美人画よりも抵抗がなかったからでは」と指摘。春信らの作品について「風景画や美人画で知られた絵師たちの、ユーモアに富んだ別の側面が見られる」と話す。

美人画、役者絵、子供と画題は異なっても、上方の伝統文化が浮世絵には色濃く反映されている。当時の世相や庶民の気質を思い浮かべるのも楽しい。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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