2019年7月16日(火)

地域の魅力、美術と結ぶ 現代芸術祭、音楽家も主役

2016/10/30 6:00
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関西で地域活性化を狙った現代アートイベントが花盛りだ。その中で主役を務める現代美術家だけでなく、地域に根差した音楽家たちの活躍が目立ってきた。美術家とは違った視点から地域の魅力を見いだし発信する役割を担いながら、地域と音楽の新たな可能性を開こうとしている。

美術家の東影智裕(右)が作品を展示する部屋で打ち合わせをする音楽家の薮田翔一(兵庫県たつの市)

美術家の東影智裕(右)が作品を展示する部屋で打ち合わせをする音楽家の薮田翔一(兵庫県たつの市)

11月3~13日、兵庫県たつの市で開かれるイベント「龍野アートプロジェクト2016 国際芸術祭 時空の共振」。かつて城下町として栄え、薄口しょうゆ発祥の地である同市で2011年に始まった。同市出身の作曲家、薮田翔一は13年から出展された映像作品に曲を提供したり、舞台監修をしたりと深く携わる。

薮田は昨年、スイスのジュネーブ国際音楽コンクール作曲部門で日本人として初優勝した気鋭。今年は6人の現代美術作家の作品に加え、ソプラノコンサート(3日)や新作オペラ「大奥」にも自作曲を提供する(12、13日)。

作家の1人、東影智裕は今回、旧龍野醤油(しょうゆ)同業組合事務所・同組合醸造工場に、流木や立体などでできたインスタレーション作品を展示。室内には薮田の曲が流れる。

薮田は「美術館より場所の持っている力が強い。この場所と美術作品をつなぐ懸け橋のような楽曲を制作したい」と意気込む。東影は「空間に合わせて作った作品も異物には変わりない。作品と場の異なる時間を音で包むことで、親和性のある時空間を生み出せる」と楽曲の力に期待する。

ソプラノコンサートではたつの市出身の詩人、三木露風の作品に薮田が曲をつけ、龍野城本丸御殿で演奏する。新作オペラは7人の歌手が百人一首などを題材にした曲を歌う。「西洋発祥のオペラは情熱的に歌う場合が多いが、今回は日本歌曲のような趣」と薮田。会場の市立龍野小学校には、観客が舞台を取り囲む円形ステージを設ける。「ここから発信する、新しい音楽劇にしたい」

石上和也は子供たちとワークショップを開いた

石上和也は子供たちとワークショップを開いた

奈良市や吉野町など奈良県内4地区で31日まで開催中の「はならぁと2016」(1地区は11月1~6日)には石上和也ら電子音響音楽家が参加する。石上は9月に地元の子供らとワークショップを開き、川のせせらぎや特産の吉野杉を使った和紙や箸の製造現場の音などを採取、楽曲に仕上げた。音楽に映像を付け、高取町の夢創館で展示した(既に終了)。「音で記憶をたどり、作品にして伝える。聴覚を通して地域を考えるのは、美術作家とは違ったアプローチ」と石上。

来年9月に京都府京丹後市で開く「丹後アートキャンプ2017―音のある芸術祭」。音を可視化したり、音の概念を考えたりするサウンドアートに特化するイベントだ。同市在住のサウンドアーティストの鈴木昭男、ギタリストの山崎昭典らが参加する。

今年8月に香港の美術作家が来訪し、下調べした。ディレクターを務める青嶋絢は「街中にはちりめん織機の音が聞こえ、古墳や旧邸が多く残る。日本と香港の作家では丹後の地の見方が違う。両者の作品から、音楽と空間との関係性が見えてくるのでは」。

日本でも美術作品を鑑賞するため地域を訪ねる「アートツーリズム」が定着してきた。美術作品と同様に地域の潜在的な魅力を引き出し、観客を引き付ける音楽の力が注目されそうだ。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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