自由闊達、音色ふくよか 四重奏点在の配置 長岡京室内アンサンブル 結成20年

2017/1/29 6:00
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京都府長岡京市を拠点にする演奏集団「長岡京室内アンサンブル」が今年で結成20年を迎える。音楽監督の森悠子の呼びかけで設立し、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの名の知れた弦楽器奏者たちが集う。息の合ったアンサンブル、ふくよかな音色の背後には独自の演奏法がある。

メンバー4人がカルテットを組み、それが4組点在した配置で演奏する((C)Tatsuo Sasaki)

メンバー4人がカルテットを組み、それが4組点在した配置で演奏する((C)Tatsuo Sasaki)

バイオリン奏者で、指導者としても名高い森。同楽団についてこう語る。「20年前の結成時には思いも寄らない形になってきた。とんでもないアイデアが出てきて、やってみると、それができてしまう」

中規模以上の室内楽では指揮者がいることが多いが、20年間指揮者なし。3年ほど前から、数種類の楽器が混在する形でメンバー4人が四重奏(カルテット)を組み、それが4組点在した配置での演奏を試みる。通常のオーケストラがパートごとに集まって扇状に整列する一般的な配置とは全く異なる。

独創的な手法が生まれたのは録音の時。録音技師が最新オーディオで立体的に聞こえるよう工夫していたところ、森は「マニアは喜ぶが、一般の人はイヤホンや普通のスピーカーで聴く。どれだけ質の高い録音をしても無駄に思えた。ならばむしろ、マイク一本に対して我々が立体的になったらどうか」と発想した。

近年はさらに奏者がバラバラの配置になることも。森は「どうすればいい音楽を人々に届けられるか、全員で常識にとらわれず自由に考えた結果。一見むちゃなものでもうまくいくのだから不思議」と笑う。

異様な合奏の景色。それを可能にしている理由の一つに、後ろ向きでの合奏練習の成果がある。互いに向かい合うことなく、耳だけが頼りの合奏だ。「各人の感覚が研ぎ澄まされる。また、ただ耳だけで合わせていると遅れてしまうため、全員が最前線で引っ張ろうという気持ちになれる」

結成を呼び掛けた音楽監督の森(右)と、若手有望株の石上

結成を呼び掛けた音楽監督の森(右)と、若手有望株の石上

フランスでの音楽活動を経て、「京都フランス音楽アカデミー」を立ち上げるなど、後進の指導に力を注いできた。同楽団にはそんな森を慕う奏者が集う。特にバイオリンは、国際的に名を上げる高木和弘、関西を拠点に活躍する谷本華子、若手の有望株である石上真由子らが在籍する。

「森先生の音楽を通して人生を学んだ」と語るのは高木だ。「例えば大統領が演説で一言間違えたら戦争になり得る。ある旋律をどのように弾くかを考えるとき、それくらいの緊張感で弾くよう言われた」

高木自身も現在は指導する立場だが「小さいレッスン室で威張るのではなく、一緒にステージに立ち、同じ立場で音楽をつくる。その姿勢は本当に大切だと実感している」と力を込める。

一方、現在医学生でもある石上。学業との両立が難しそうだが「もともと医者を志していた。幅広くやることで、音楽の解釈にも幅が出るはず」と語る。ベテランから若手までそろう同楽団だが、気負いはない。「長岡京では全くためらわずに自分の考えが言える。他ではそうはいかない」

2月25日に大阪市のいずみホール、同26日に京都市の府立府民ホール・アルティで「結成二十年 新しい時代へ」と題する演奏会を控える。音作りの過程を、自由闊達に楽しみつつ、責任感を持って取り組んでいるメンバーたち。その魅力がふくよかな響きに凝縮されている。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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