2019年5月27日(月)

伊丹上空から「日本列島」が見える?(謎解きクルーズ)
野鳥飛び交う昆陽池公園 行政が造成、地域の目印に

2015/1/10 6:30
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出張で搭乗した伊丹空港(大阪国際空港)発の機内。窓から何気なく見下ろした景色に驚いた。眼下に日本列島が見えたのだ。「そんなの当たり前」と言うなかれ。伊丹の市街地に囲まれた緑地の水面に、地図で見慣れた北海道、本州、四国、九州の四つの島が浮かんでいる。なぜこんな「ミニ日本列島」ができたのか。

昆陽池に浮かぶ「日本列島」(兵庫県伊丹市)

昆陽池に浮かぶ「日本列島」(兵庫県伊丹市)

ベルト着用サインが消えた後、客室乗務員に尋ねてみた。「昆陽池(こやいけ)公園ですね。伊丹空港から旋回して高度を上げていく時に見えることが多いですよ」と言う。後日、調べると昆陽池公園は空港から西に2キロメートルほど。空港は大阪府豊中市、池田市、兵庫県伊丹市にまたがるが、公園は伊丹市役所の近くだ。

早速現地に出向く。空からは小さく見えたが、歩くと予想以上に広い。池にはカモやサギなど数え切れないほどの野鳥。都会のオアシスと言うべき地だ。池の中心には木々が茂る島。日本列島のどれかだが、陸地からだと大きすぎて判別しにくい。

☆ ★ ☆

地元では有名なのだろうか。犬と散歩中の高齢者や下校途中の高校生に聞いてみると「日本列島? 何言うとんねん」。そっけない返事ばかり。誰でも知っているわけではないようだ。

帰り道、伊丹市みどり公園課の原田修さんを訪ねる。「公園は1972年に野鳥を呼べる公園として整備され、日本列島も造成されました。地域のランドマークにとの方針でした」

カワウのフンに汚染され樹木が枯死(2002年)

カワウのフンに汚染され樹木が枯死(2002年)

古い割に知名度は低いようだが……。「確かに地元でも知らない人は多いようです。空からでないと実感できないせいでは」と原田さん。日本列島の長さは250メートルほど。実際の1万分の1といったところだ。

続いて伊丹市立博物館を訪ね、亀田浩館長に公園の歴史を聞く。「昆陽池は行基がため池として造りました」。行基といえば奈良時代、東大寺の大仏建立で中心となった高僧。そこまで歴史が遡るとはビックリ。江戸時代まで伊丹の農地を潤し続けたが、戦後にかけて市街地が取り囲むようになったという。「昆陽池には様々な歴史が詰まっています。日本列島の歴史も興味深いですよ」とも教えてくれた。

☆ ★ ☆

公園には多数の野鳥が群れている

公園には多数の野鳥が群れている

池の日本列島は造って終わり、ではないらしい。環境の変化に大きく左右され、列島らしい姿を保つ努力が欠かせないという。例えば池の水位。現在も農業用水として利用され、天候や時期によって水位が大きく上下する。そのため、列島が膨れ上がって4島が陸続きになったり、逆にスリムになり本州が分断されてしまったこともある。

「環境破壊」も本物と同じく深刻だ。十数年前、島々に大量のカワウが繁殖し、巣を作った。カワウは営巣時、樹木の枝を折り、フンは水質や土壌を汚染する。その結果、島々の樹木はほぼ枯死したという。当時の航空写真を見ると列島は土色。日本全滅だ。カワウ恐るべし。

周囲は野鳥の保護区でカワウは駆除できない。地道な植樹活動を続け、数年でようやく列島の緑は復活した。中心となったのが、伊丹の自然を守り育てる会の高木一宇さん。「こんな狭い日本でも大変な手間がかかる。ましてや実際の日本列島の環境を守るには並大抵の努力では無理です」

わずか1万分の1以下の日本といえども、環境を守るため、人々が長年努力を積み重ねてきた。失われた緑を復活させるのがいかに大切な営みか。身近にある小さな日本列島が教えてくれる。

(大阪・文化担当 田村広済)

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