/

自然と人間 包括的に思考 現代に生きる南方熊楠(4)

軌跡

南方熊楠が研究した「粘菌」。一見カビのような変形体が移動しつつ微生物を食べ、成熟すると子実体(しじつたい)とよばれる小さなキノコ状となって胞子をばらまく。動物と植物の間にあるような生物だ。「生」や「死」もはっきりしない。熊楠は粘菌の観察を通じ「境界」がはっきりさせない思考法を展開する。自と他、物と心……。

太平洋を見下ろす高山寺にある熊楠の墓

そんな考え方は幼少から親しんだ東アジアの植物学「本草学」によっても支えられた。神話や伝説、薬効など人間とつながった形で植物をとらえる。自然と人間を不可分として把握しようとした。

さらに、欧米滞在13年余の体験から、ヨーロッパの学問の方法論も熟知していた。明治期の知識人が東アジア的な思考法を捨てて、欧州流の学問の導入に傾いたのに対し、熊楠は欧州との対峙を通じて、独創的な世界を築いた。

比較社会学者の鶴見和子は書く。「南方には『日本にあるほどのことは欧州にあり、欧州にあるほどのことは日本にある』という人間の普遍性についての信念があった」

龍谷大の松居竜五教授は「欧米の学界には非西洋の観点から科学、宗教、生態系を包括的にとらえようとした熊楠への驚きがある」と話す。

1941年12月29日、熊楠死去。「縁の下に明朝、小鳥が死んでいるから丁重に葬って」と遺言を残した。我々はその言葉に応えることができたのか。

(この項おわり)

次回は「もんで、たたいて60年」

すべての記事が読み放題
まずは無料体験(初回1カ月)

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン