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前衛美術「具体」に脚光(世界へ 関西スピリッツ)

第4部 無二の知と技で挑め(4) 破天荒な表現法で60年

6月、世界的なオークションハウス、サザビーズパリでの競売で具体美術協会(具体)の元メンバー白髪一雄(1924~2008)の油彩画「激動する赤」(69年)が530万ドル(約5億5000万円)で落札され、衝撃が走った。

「履けない靴」というタイトルの作品を無題に変更したいきさつを語る向井さん

「具体」は大阪市出身の画家、吉原治良(1905~72)が54年に結成した関西拠点の前衛美術家集団。白髪は天井からつるされたロープにつかまり、足でキャンバスの絵の具を踏み広げ「激動する赤」を描いた。

米で展覧会開催

このほか、瓶詰めにした絵の具をキャンバスにぶつけて描画した嶋本昭三、木枠に張った紙を体で突き破り、抜け型をアートと見た村上三郎など、破天荒な発想で常識を砕き散らした。

吉原の死で72年に解散するが、魅力は色あせない。昨年はニューヨークのグッゲンハイム美術館で具体展が開かれ、結成60年の今年も元メンバーの個展や回顧展が相次ぐ。

7月に大阪市内で個展を開いた元メンバーの今井祝雄(68)は「デパートの屋上から絵画をつるしたアドバルーンを多数上げたり、水や泥を使った野外彫刻などとにかく面白いことをやっていた集団」と語る。自らも79年から「デイリーポートレート」と題し、現在進行形の作品として毎日自分の写真を撮る。

堀尾貞治(75)も年間100回以上の展示やパフォーマンスを行う。道路に水をまき、その形をチョークでたどる作品のほか、身近にある木片などに毎朝、絵の具を塗り重ねる。その層が数十センチにもなった。

吉原をめぐり、向井修二(74)にはこんな思い出が鮮明だ。具体に入る直前、革靴にクギや石こうを詰め白く塗った作品を発表。「タイトルは『履けない靴』だったが、吉原は『いらない』と言った。鑑賞者がタイトルを理解すると、そこで思考が止まる。具体では作品との対峙を重視していた」と話す。

吉原が56年に発表した「宣言」には、具体美術において「人間精神と物質とが対立したまま、握手している」とある。作品には新しい素材や自分の身体など、物質と精神との緊張を体現したものが多い。

DNA脈々と

具体の活動時を知らない若手にもDNAは脈々と継がれる。大津市の成安造形大学で今井のクラスに所属した瀧弘子(25)は、壁に自らの後ろ髪を引かれる姿勢をとり続ける作品などを今年発表。影響を受けたという白髪の作品について「アクションすることと、描いたものとのバランスが取れている」と語る。

「具体には鋭い国際感覚があった」と話すのは芦屋市立美術博物館の国井綾学芸員だ。吉原は欧米の美術動向をチェックし、機関紙は英訳を付けて出版。実際、具体を初めて認めたのはフランス人批評家だった。

その誕生と、時代を駆け抜けるスピードが速過ぎた感のあった「具体」。しかし、星が爆発して、別の星になるように、世界のアーティストらに多彩な種子をまいたことは間違いない。(敬称略)=この項おわり

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