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もっと関西 民間で国内最大 神戸映画資料館10周年 埋もれたフィルムに光(カルチャー)

2017/7/23 6:00
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民間のフィルムアーカイブとしては国内最大の規模を誇る神戸映画資料館(神戸市長田区)が今年、開館10周年を迎えた。映画上映の急速なデジタル化が進んだ中、運営費用の負担などの課題を抱えながらも、貴重作の発掘や保存といった面で成果を上げている。

同資料館の計画は阪神大震災で被害を受けた神戸市新長田のまちづくりの一環として持ち上がった。2007年3月、安井喜雄館長が代表を務める団体が兵庫県の助成金を受けて開館。フィルムやパンフレット、映画関連の書籍の収蔵のほか、38席の上映館を備えイベントにも取り組む。開館2年間は県の助成があったが、09年4月からは独立採算で運営している。

もとをたどれば1974年、一映画ファンだった安井館長が、仲間と大阪市内に映画関連書籍を持ち寄ったのが始まりだ。同市内で拠点を変えつつ活動を続けてきたが、所蔵品が増え保管場所に困ったところで新長田に行き着いた。

所蔵フィルム数は約2万本で、重複作を除くと約1万6千タイトルという。国内最大の東京国立近代美術館フィルムセンター(東京・中央)の所蔵数は約8万本。それと比べると規模は小さいが、民間施設としては国内最大とみられる。

劇映画だけでなく、教育映画や記録映像など幅広く収集するのが同資料館の特徴だ。現存しないと思われていた作品の発掘で、数多くの実績を上げた。

戦後の日本を代表する"伝説の女優"原節子の最古の出演作「魂を投げろ」(1935年)もその一つだ。古物商から購入した約100本のフィルムのうち表書きのないものから、伝わる筋立てと残された映像とを突き合わせて特定した。

日本アニメーションの先駆者、大藤信郎の第1作「のろまな爺(じじい)」(24年)や未完の遺作「竹取物語」(61年)も発見。そのほか、美空ひばりが10代のころに出演した「南海の情火」など、発掘した作品は枚挙にいとまがない。戦前、大阪で前衛的な映画を生み出していた森紅の作品は、同資料館で開かれていた出自不明の個人映画上映会に居合わせた研究者によって偶然発見された。安井館長は「自分がダメな作品と思っても他の人が価値を見いだすかもしれない」と指摘する。

実は開館当初の収蔵作品は約5千本だった。開館後に急増した背景には、映画上映のデジタル化がある。フィルムの使い道がなくなり、映画会社などから無償や安価で手に入るようになったという。京都市のおもちゃ映画ミュージアムで代表を務める大阪芸術大学の太田米男教授は「フィルムという形あるモノとして残すことには意義がある。個人やアマチュアが撮影したものでも、100年たてば貴重な資料になる」と強調する。

資料館の運営には上映会などの収入や寄付のほか、安井館長の持ち出しも充てているという。アーカイブの永続に向け、公的機関や大学などと連携を深めている。2014年から文化庁の事業に採択され、収蔵作品の網羅的調査を実施。タイトルや制作年などをデータベースにした。翌年には、新たに戦前の初代通天閣や道頓堀の繁華街をカラーで収めた映像を復元するなど早速成果を上げた。

神戸芸術工科大学とは、フィルムの映像を高精細の「4K」にする事業に着手した。同資料館の田中範子支配人は「アーカイブは継続しないと意味がない。一つの足場だけではなく、公的機関や大学など多様な機関と連携することで維持していきたい」と話す。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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