/

もっと関西 うつわに込めた美の世界(アート)

欧州の高級磁器や江戸の和ガラス

多様なうつわの美を堪能できる展覧会が関西で相次いでいる。世界的に知られた高級磁器や江戸時代の和ガラス、各国の現代作家の陶器など、形状や色彩も異なる作品を間近で手に取るように味わってみたい。

東洋陶磁美術館で開かれている「ハンガリーの名窯 ヘレンド」展(大阪市北区)

大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市北区)で開かれている「ハンガリーの名窯 ヘレンド」展(7月30日まで)。欧州を代表する高級磁器の1つ、ハンガリーのヘレンドの歴史を同国のブダペスト国立工芸美術館、ヘレンド磁器美術館、ハンガリー国立博物館所蔵の約230点で振り返る。

ヘレンドの始まりは1826年、ハンガリー南西部の小さな村ヘレンドで生産された磁器だった。ドイツのマイセンや中国の磁器などに学び、ほどなくオーストリア帝室・ハンガリー王国御用達窯としての地位を確立した。流麗で精緻、色彩あふれる東洋風の花柄などの文様がヘレンドの大きな魅力だが、40年代にはすでにこうした様式を確立していたことが分かる。

欧州全体に知られるようになったのは51年のロンドン万国博覧会。英ビクトリア女王からディナーセットの注文を受けたのが契機だった。ヘレンドは多彩な文様を売り出したが、最初に注文を受けた顧客の名称をシリーズ名として冠することが多い。今展でも「クイーン・ビクトリア」文様のティーセットやスープ鉢を見ることができる。

先行したマイセンやウィーンなどの磁器は当初から王侯貴族の強力なバックアップを受けたが、ヘレンドは純然たる民間企業として出発した。「技術に加え、上流階級への売り込み方も優れていた。現代まで高い評価を得ている理由が見て取れます」。同館の野村恵子主任学芸員は言う。

同じうつわの展覧会でも対照的なのがミホ・ミュージアム(滋賀県甲賀市)で開催中の「和ガラスの美を求めて」展(6月18日まで)。江戸時代に生産された和ガラスのうつわなど約180点を紹介する。

欧州からガラスのうつわが本格的に伝わったのは室町時代。触発された大名たちは16世紀以降、職人たちにガラスのうつわを作らせた。「型吹き草花文色替り三段重」は五弁の花と水玉をあしらった三色のガラスで構成する重箱だ。よく見ると、段ごとに微妙に文様が異なる。段ごとにわざわざ型を別々に作ったのだ。

他にも磨き上げられた切子や、ヒョウタン形やかぶ形のとくりなど、職人たちの粋が伝わる作品ばかり。やわらかくはかなげ、独特の色気まで漂わせる。「欧州のガラスと明らかに方向性が異なる。独自の作品世界に触れてほしい」。同館の東容子学芸員は言う。

「和ガラスの美を求めて」展の「型吹き草花文色替り三段重」(江戸時代)

同じ甲賀市の滋賀県立陶芸の森陶芸館では「うつわ ドラマチック展」が開催中だ(6月11日まで)。18カ国の現代作家86人の陶磁器約150点を展示。バーナード・リーチ、ルーシー・リー、ハンス・コパー、富本憲吉、濱田庄司など、世界と日本の陶芸の現代史を概観できる。「誰もがお気に入りの作品や作家を発見できるはず」と、同館の三浦弘子専門学芸員。

本来、うつわは実用品。作り手はうつわに用の美を見いだし、使ううつわから魅せるうつわへと美の本質を変化させていく。その過程で作家ならではの作品世界が展開される。国や地域、時代により全く異なるうつわの数々に、多様な美の深みが内包されている。

(大阪・文化担当 田村広済)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン