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ラジオ体操「第3」よ~い!(とことんサーチ)

速いテンポ 心もほぐす

夏休みといえば、幼い頃に近所の公園でラジオ体操をしたのを思い出す。国民的体操として「第1」「第2」が知られるが「滋賀県東近江市で幻の第3体操が行われている」という情報を耳にした。一体どんな体操なのか、体験してみた。

「さあ、ラジオ体操第3を始めましょう」。昼休み、スピーカーから流れる音楽に合わせて、なにやら見慣れない体操に励んでいるのは滋賀県東近江市の職員たち。保険年金課の夏原善治課長に聞くと、「2013年から毎日やっている。きっかけは、うつ病予防を狙いとした『こころとからだの健康づくり事業』だった」と教えてくれた。

同市が健康調査をしたところ、普段から少し強めの運動をしている人は、心の状態も良い人が多いと分かった。そこで龍谷大で公衆衛生を研究している安西将也教授に協力を依頼したところ、戦後の一時期に放送された幻のラジオ体操第3が適しているとして復活させたのだという。

早速安西教授のいる大津市の龍谷大瀬田キャンパスへ。すると安西教授の共同研究者で同大学で体育を教える井上辰樹教授と、体操の普及に努める「幻のラジオ体操第3サークル」に所属する学生たちが指導してくれた。

最初は「足踏み」運動から。これは簡単、と思っていると、第2運動「脚の屈伸」で腕を振りながらつま先立ちに。バランスが取りづらく、ふくらはぎの筋肉を使う。第8運動「体側を伸ばす」や第10運動「体の回旋」は重心を大きく移動させながら行うためかなり脚に負荷が掛かる。

ラジオ体操第3独特の動作もある。第11運動「跳躍」では小刻みにジャンプした後に大きく手脚を広げる大ジャンプが挟まれ、第13運動「腕の屈伸」では腕を横、上、前、下と素早く動かす。

ラジオ体操第3が制作されたのは1946年。しかし、動作が複雑だったことなどから約1年半で放送が終了した。安西、井上両教授は、簡易保険加入者協会が79年に発刊した書籍「新しい朝が来た―ラジオ体操50年の歩み」などを手掛かりに半年がかりで復刻に取り組んだ。書籍には大ざっぱなイラストに簡単な解説が書かれているだけ。井上教授は「映像が残っておらず、想像力でつなぎ合わせながら動きを組み立てていった」と苦労を明かす。

滋賀県の多賀町役場でも、始業前に職員がラジオ体操第3に取り組んでいる

全体を通しての特徴はテンポの速さだ。次から次へと動作が移行し、少し油断するとついていけない。安西教授らは復刻の際、インターネットの動画サイトにあった当時の演奏からピアノ伴奏を再現したが、普及しやすいようテンポをゆっくりにしたという。

安西教授は「体操中の人の心拍数を測ると、ラジオ体操第1、第2に比べて、第3はより上昇しており、運動強度が強いといえる。また急激に心拍数を上げず、徐々に上げてピークへ持って行き、第12運動あたりから徐々にクールダウンする。70年前にこれほど計算されたプログラムを作ったことに驚く」と話す。

13年11月の初お披露目以来、両教授は講習会を開くなどして普及に努めている。滋賀県多賀町や福島県の自治体、また各地の中小企業などで徐々にではあるが広がりを見せているという。

ラジオ体操といえば、周囲の人々と動きをそろえるのが重要だ。テンポが速く難しい動作の多い「第3」だが、みんなで和気あいあいと楽しめる魅力もある。記者も幻の体操を取り入れつつ、健康な体づくりは幻とならないように心掛けたいものだ。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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