2019年6月20日(木)

新年らしい日本画 兵庫で3展覧会 高い精神性、美意識を堪能

2017/1/22 6:00
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1月も後半に入ったが、兵庫県の3つの美術館では新年らしい日本画の展覧会を開催している。雪景色や咲き始めの桜、着物姿の女性像など、伝統的な日本画の数々を目にすれば、まだしばらくは正月気分を味わえるはずだ。

新たな命の胎動

冬景色の中にも、やがて来る春を思わせる東山魁夷の「清晨」

冬景色の中にも、やがて来る春を思わせる東山魁夷の「清晨」

神戸市のBBプラザ美術館で開かれている「日本画との対話 自然と人間」(2月19日まで)展。館蔵品から前田青邨、小倉遊亀、高山辰雄、平山郁夫らの風景画を中心に約30点を選び展示している。

ひときわ目を引くのが東山魁夷の1951年の作品「清晨(せいしん)」だ。清晨とは早朝の意味。明け方のやわらかな光の中、雪化粧の静かな森林を横長の画面に捉えているが、単なる風景画ではない。よく見ると、画面の中央右寄りや左端の樹木は薄く緑に色づいている。根元あたりには人が歩いたような跡も。冬景色の中に感じられる新たな生命の胎動。やがて来る春を思わせる。

細い端正な線で女性を描いている北野恒富の「舞妓」

細い端正な線で女性を描いている北野恒富の「舞妓」

東山が前年に発表した代表作「道」は、まっすぐ伸びる1本の道を描いただけの単純な構成で崇高な意志の存在を表し、日本画の新たな可能性を切り開いた。「清晨」もまた、新たな始まりの予感、そして抑えがたい高揚感が伝わってくる。新年にふさわしい作品と言える。

加山又造の「雪ノ渓」も雪景色。「清晨」と比較してみたい。同じく加山の「夜桜(春宵)」は三日月の光に照らされた夜の桜が幻想的で美しい。様々に描かれた自然の美。風景は日本画の定番だが「自然を描くことで人間の内面をどう表すかを日本画は常に考え、新しい作風を生み出してきた。それが今展を通して理解してもらえれば」と、同館の坂上義太郎顧問は展示の狙いを解説する。

女性像あでやか

明石市立文化博物館で開催中の「艶美の競演―東西の美しき女性 木原文庫より―」展(2月5日まで)は日本画の華、女性像を中心に約80点を展示する。上村松園や鏑木清方、島成園らのあでやかな世界が広がる。

注目したいのが北野恒富の「舞妓(まいこ)」。濃厚な情感や退廃的な雰囲気を好んだ大阪画壇の大家だが、この作品は細い端正な線で清らかな女性を描いている。頭上には咲き始めた桜の花。春の訪れを初々しく表現した。

着物姿の女性像が多く並ぶが、横山大観や竹内栖鳳の風景画も見られる。「全体として、新年らしい雰囲気を濃厚に味わってもらえます」と、同館の梶原誠太郎学芸員は言う。

四季折々の自然

西宮市大谷記念美術館「日本画にみる四季のうつろい」展(2月12日まで)は館蔵品から風景画を中心に約50点を紹介。菱田春草や川合玉堂、山元春挙らが四季折々の自然を描いた作品が並ぶ。「花鳥風月や雪月花など風雅な世界を日本画は尊重してきました。風景画にとっていかに季節感が大切かが理解してもらえるはずです」と、同館の内村周学芸員は言う。

3つの展覧会を巡って思うのは、風景画や女性像から感じられる高い精神性や美意識。美術館で気に入った名品を前に、2017年を迎えての決意や抱負などを今一度、確認してみるのもいいだろう。

(大阪・文化担当 田村広済)

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