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京の朝 文化薫る喫茶店 珈琲三都物語(1)
軌跡

2015/12/22 6:00
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 「京都の朝は、イノダコーヒの香りから」。このキャッチコピーで知られるイノダコーヒは1940年創業、老舗喫茶が集まる京都市でも最も有名な店の一つだ。池波正太郎らがエッセーにつづり、東映の京都撮影所があるため高倉健ら映画人もひいきにした。

大きな円形カウンターが目を引くイノダコーヒ三条支店(京都市中京区)

大きな円形カウンターが目を引くイノダコーヒ三条支店(京都市中京区)

 70年に開店した三条支店は大きな円形カウンターが名物。中で白い上着のスタッフがコーヒーを入れる。「高倉さんはいつもカウンターの入り口に近い席に座っておられた」(国本信夫業務課長)

 創業者の猪田七郎は画家でもあり、内外装も自ら手掛けた。フォーク歌手の高田渡は「珈琲不演唱(コーヒーブルース)」で「三条堺町のイノダ」と歌った。店内に漂うかぐわしい香りは古都の文化と結びつく。

 総務省の家計調査ではコーヒーの年間消費額は京都市(7887円、2012~14年平均)が全国一。暮らしとコーヒーが長年、密接に結びついてきた。進々堂、六曜社、喫茶ソワレ――。なじみの店で市民や学生は思索にふけり、議論を交わしてきた。

 そんな文化の薫りが濃厚なのが西木屋町通りの「フランソア喫茶室」だ。34年、労働運動家の立野正一が芸術や思想を語らう場として開いた。

 京都大、同志社大、立命館大などの学生や教員が集い、桑原武夫、鶴見俊輔ら文化人のサロンとなる。03年、喫茶店では初めて国の登録有形文化財になった。一昨年、店の歴史をたどる研究書を著した京都大の佐藤裕一助教は「京都の政治や文化に様々な影響を与えた」と指摘する。

 フレッシュクリームがたっぷり入ったコーヒーが名物。コーヒーが苦手な常連、劇団民芸の宇野重吉のために考案されたという。「先日息子の寺尾聡さんが来店された。2代、3代で通う常連さんは多い」と立野隼夫社長は話す。

 画家の藤田嗣治がメニューの表紙絵を描いたこともあった。隼夫社長はかつて父の正一が藤田そっくりのおかっぱ頭にして、丸めがねをかけた写真を見せられた。「藤田が戦争画を描いて戦後批判されても、父は決して非難しなかった。憧れていたのだろう」

 正一も京都で日本画を学んだ。「ドーム型天井など凝った造りのこの店こそ、自分の作品だと思っていたのでは」と隼夫社長は語る。

 大阪・文化担当 多田明が担当します。

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