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いずみシンフォニエッタ、現代音楽に挑んだ15年

いずみホール(大阪市中央区)を拠点とする楽団、いずみシンフォニエッタ大阪が結成15周年を迎えた。作曲家の西村朗が提唱して結成し、同ホールが運営。地方楽団では珍しく現代音楽を中心に国内外の新曲や難曲に取り組んできた。現代音楽の発展に貢献する楽団が改めて注目を浴びる。

7月18日、いずみシンフォニエッタ大阪は同ホールで第35回定期演奏会「天女散花、恋は魔術師」を開く。常任指揮者の飯森範親が指揮。若手作曲家、坂東祐大が同楽団から委嘱を受けて書いた新作「めまい」の初演が話題を呼ぶ。

坂東は大阪出身の24歳。東京芸大作曲科を首席で卒業した俊英だ。「めまい」はヒッチコック監督の同名映画から想を得た。坂東は「映画の主人公はトラウマを抱え、高所恐怖症に悩む。本来は不快なものをテーマに据えた曲だから不快に響くかもしれない。だが、不快が快感に変わる瞬間がある。それを聴いてほしい」と新作の狙いを明かす。

同楽団は坂東のような若手からベテランまで現代音楽の作曲家たちに活躍の場を与えてきた。レパートリーの開拓にも意欲的で、15年間、34回に及ぶ定期演奏会で23カ国の作曲家の140曲以上を演奏。うち26曲が楽団の委嘱で作曲された新作だ。新作発表後、日本の新進作曲家に贈られる芥川作曲賞を受賞した作曲家も少なくない。

行政からの支援に頼れない民間ホールが聴き手の限られる現代音楽の楽団を支える例は世界的にもそう多くない。ましてや地方楽団となればなおさら収益環境は厳しい。

公共ホールは住民の幅広いニーズに広く応える必要があるし、大ホールは集客力を考えて現代音楽には及び腰になりがち。一方、客席数約800のいずみホールはほどよいサイズ。それに加え、「現代音楽の発展に尽くす使命感がある」と西村は強調する。

西村は同楽団の役割について「演奏の機会が多いクラシック音楽と違い、現代音楽は新作を安定的に発表し、演奏できる場が必要。美術作品にとって美術館のようなものだ」と説く。西村自身、同楽団の委嘱で数々の新作を発表してきた。

7月の演奏会では西村が2012年に発表した「ギター協奏曲『天女散花』」も演奏する。かつて中国・北京で鑑賞した京劇に触発され作曲した。作曲中に亡くなった母への追悼と感謝の念も込めている。「人と人をつなぐ楽器としてギターを意識した。ギターの新しい魅力を感じてほしい」とも言う。

演奏会では他に、ブラジル出身で20世紀を代表する作曲家の一人、ヴィラ=ロボスの「ブラジル風バッハ第9番」「前奏曲第3番『バッハへの讃歌』」、スペインの作曲家、ファリャの「恋は魔術師」も披露する。20世紀前半にも目配りしたプログラムだ。

15年間、同楽団が現代音楽に力を注いでこられたのは楽団員の技量も大きい。西村は「二十数名の楽団員は全員がソリスト級の腕前」と話す。定番が多いクラシックに比べ、現代音楽は演奏の機会が限られ、一度きりの演奏も当たり前。難曲も多い。

「苦労ばかりと思える。演奏会の度、ベートーベンがどれだけ弾きやすいか実感しますよ」。楽団員の呉信一は冗談めかして笑う。関西を代表するトロンボーン奏者の一人だ。「この楽団に選ばれたプライドがあるから逃げ出せない。最高のメンバーと共演できるし、終わった時の充実感は格別」とも言う。

音楽評論家の白石知雄氏は「15年間、現代音楽の新作を発表し続け、演奏の場を提供してきた意義は大きい。若手の発掘、育成でも大きな成果を上げてきた」と指摘。そのうえで「大阪での地道な活動が国内外で注目される機会が増えた。今後、ますます存在感が高まる」とみる。

(大阪・文化担当 田村広済)

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