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現代音楽の可能性広げる 電子音響 注目の公演相次ぐ

関西で今夏、コンピューターなどを駆使して演奏する電子音響の公演が相次ぐ。現代音楽の手法に先端技術を加味した電子音響は20世紀半ばに脚光を浴び、21世紀もテクノや即興演奏などと融合しながら発展してきた。現代音楽の可能性を切り開く先端的な表現を堪能できる。

アクースモニウムは様々なスピーカーをオーケストラのように配置する(2014年、ブリュッセルでの檜垣の公演のリハーサル)

7月6日、ザ・フェニックスホール(大阪市北区)でサックス奏者、井上ハルカが「サクソフォンリサイタル」を開く。エレクトロニクス担当として現代音楽家の有馬純寿が共演する。

1月に死去したフランスの作曲家ピエール・ブーレーズ作「二重の影の対話」などを披露する。事前に録音した井上のサックス演奏を有馬がその場でコンピューターで加工、響きを調整して井上の生演奏との「二重奏」を繰り広げる。

「生音と、その影となる電子音響が対話するように交わる」と有馬。「ライブエレクトロニクス奏者」として「リアルタイムで音にエフェクトをかけ、他の奏者や観客との呼吸を読みながら音を出す」という。

コンピューターを駆使して演奏する有馬純寿

帝塚山学院大学准教授でもある有馬は7月16日、いずみシンフォニエッタ大阪がいずみホール(同中央区)で開く定期演奏会にも出演。現代音楽の巨匠スティーブ・ライヒが書き、日本初演となる「ダブル・セクステット」の音響を担う。

12人が2組の6重奏に分かれて演奏。通常のクラシックは拡声装置を使わないが、この曲はスピーカーで電気増幅して聴かせる。「単に音量を大きくするのではなく、状況に応じて強弱を調整する。ライヒはスピーカーを通した音色に新たな可能性を感じていた」

9月24日、ロームシアター京都(京都市左京区)での「寒川晶子ピアノ・コンサート」には奈良県在住のアクースモニウム奏者、檜垣智也が登場する。楽器の音などをその場で加工するライブエレクトロニクスに対し、アクースモニウムは完成した音源を複数のスピーカーから出力する。

「会場に応じてスピーカーの種類や配置に気を配り、音量や色彩感、密度を緻密に構築する。会場ごとに新たな価値を持つ空間を作れるかが重要」と檜垣。演奏会では特殊な調律の寒川のピアノとアクースモニウムの音が融合。「いつものドレミとは違う音が飛び交い、音の概念を深化、拡張する演奏になるのでは」

電子音響音楽は1940~50年代、フランスやドイツで隆盛。ガラスが割れる音などの「具体音」や、サイン波などの電子音を曲に取り入れた。その後、テクノやノイズ、即興といったジャンルと互いに影響し合いながら発展してきた。

関西では69年、大阪芸術大学が日本の大学で初の本格的な電子音楽スタジオを開設。NHK電子音楽スタジオのチーフエンジニアだった塩谷宏を教授に招き、電子音楽教育をリードしてきた土壌がある。

東京大学の長木誠司教授(音楽学)は「60年代以降、電子音響の技術は日進月歩してきたが、近年ようやく技術と芸術的センスを兼ね備えた存在感のある演奏家が出てきた」と指摘。これからの電子音響の楽曲について「単純に電子音を取り入れるだけでなく、コンピューターの思考や原理に基づいた音楽がますます増えるのでは」と話している。

(大阪・文化担当 安芸悟)

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