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友五郎120年ぶり復活

日本舞踊、上方舞の山村流

日本舞踊の上方舞四流の一つ、山村流の流祖、山村友五郎の名跡が約120年ぶりに復活した。7月に山村流六世宗家が三代目友五郎(50)を襲名し、今月、襲名披露公演「舞扇会(ぶせんかい)」を開く。来年は山村流の拠点、大阪・道頓堀の開削400年に当たり、親しんだ町の繁栄も願う。

軽やかな表情で語る山村友五郎

「私の襲名が口火になって、上方の伝統芸能への関心が高まり、道頓堀が往事の芝居街の面持ちを取り戻せればという思いがあります」。8月29日、大阪市内にある初代と二代目友五郎の墓前で、三代目は襲名披露の報告供養を済ますと、軽やかな顔で心の内を語った。

上方舞は江戸時代に京阪地域で生まれた。山村流宗家は約200年前、初代友五郎の時代から道頓堀を中心とする大阪・ミナミに根を張ってきた。道頓堀の町は堀が開削された400年前に芝居街としての骨格ができあがった。流儀の隆盛と、親しんだ町の繁栄を改めて願う。

来年はやはり大阪でなじみ深い名跡、歌舞伎の四代目中村鴈治郎と、文楽人形遣いの二代目吉田玉男の襲名も重なる。初代鴈治郎は大阪で活躍した。文楽は大阪発祥の伝統芸能。友五郎襲名はその先陣を切る格好だ。

26~28日、国立文楽劇場(大阪市)で開く舞扇会には流儀の約60人が出演する。「どの日に来ていただいても、山村流という流儀を分かってもらえる内容」と自負する。自身は「ゆき」と「五斗三番叟(ごとさんばそう)」「雪の山」などを舞う。「ゆき」は流儀で大切にしている曲。谷崎潤一郎の代表作「細雪」の中で、大阪・船場に住む主人公姉妹、蒔岡家の四女妙子が舞った演目だ。「五斗三番叟」は初代が振り付け、「雪の山」は二代目が初代の追善で舞った曲でもある。初代、二代目とのゆかりは深い。

上方舞四流の井上流、楳茂都(うめもと)流、吉村流の各家元に特別出演を依頼した。上方歌舞伎の継承者の一人、中村壱太郎にも特別出演してもらう。初代と二代目の友五郎は歌舞伎の振付家としての顔も持っていた。「地唄舞と歌舞伎舞踊は流儀の柱」と位置付ける。

豪華な顔ぶれだけに、演目の構成などで普段以上に気を遣う。だが、三代目は「公演を催せて、うれしい気持ちの方が大きい」と顔をほころばせる。舞踊家だった母が早世したため、1992年に27歳の若さで山村流六世宗家、山村若を襲名。宗家を継ぐ重圧が襲名と重なった。「あの時に比べれば、今回は襲名だけなので精神的に楽」と明かす。2006年、創流200年を記念した大規模な公演を成功させた経験も、気持ちを和らげているようだ。

若い頃から、「日本舞踊にもっと親しんでもらうには、どうしたらいいか」という思いを抱いてきた。芸としての高みは崩せない。「分かりやすい舞にすればいい、とはいかない」と芸術性と親しみやすさの両立に頭を悩ませる。

日本舞踊のあり方や将来について、気安く話し合える仲間がいる。09年、東西の異流派の舞踊家5人で組織した「五耀会(ごようかい)」の面々だ。初代、二代目の墓前への報告供養の数日前、「五耀会」の面々と会食し、舞踊などのことをざっくばらんに話し合った。その仲間たちも舞扇会に友情出演してくれ、自身を含む5人で1曲を舞うのを楽しみにする。

今後の活動には「当面はいままで通り」と自然体で臨む。落ち着いたまなざしの先には今回、若を襲名披露する長男の侑(ゆう、23)がいる。「若が独り立ちしてくれたら、私は好きにするかもしれません」と穏やかな表情で話す。

(編集委員 小橋弘之)

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