2019年5月22日(水)

酒かす料理 関西は多彩(謎解きクルーズ)
灘・伏見の恵み余さず 「始末の精神」も背景?

2015/2/21 6:30
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寒さがこたえる季節、関西では体が温まるかす汁がしばしば食卓にのぼる。家庭では味噌汁代わり、飲食店に行けば「定食」「うどん」など多彩なメニューがそろう。各地にかす汁はあるが、関西は品目が豊富なのが特徴。食卓の「主役」になる場合もあり、存在感は大きい。なぜ人気なのか。

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かす汁鍋にはサケを入れるのが一般的(神戸酒心館の料亭「さかばやし」)

かす汁鍋にはサケを入れるのが一般的(神戸酒心館の料亭「さかばやし」)

神戸市東灘区の日本酒メーカー、神戸酒心館が経営する料亭「さかばやし」にはこの季節、冬限定のかす汁鍋を味わおうと、中国や韓国など海外からも客が訪れる。同社の久保田博信常務は「灘の酒蔵だから、おいしい酒かす料理が提供できる」と胸を張る。

かす汁の味の決め手は酒かすだ。兵庫県調理師会の中西彬会長は「日本酒のもろみを搾って残るのが酒かす。味噌などと合わせて溶かし、豚肉や根菜、魚介を加えて出来上がる」とレシピを教えてくれた。食文化に詳しい武庫川女子大学の升井洋至教授は「かす汁は関西のほか、東北や新潟など酒どころで好まれている」と指摘する。

小西酒造の酒かす(兵庫県伊丹市)

小西酒造の酒かす(兵庫県伊丹市)

兵庫県北部の香美町は学校給食の献立にかす汁を採用。肉や野菜を多めにして児童が食べやすくしている。町には「但馬杜氏(とうじ)」ら日本酒造りの担い手が多い。「おいしいお酒ができるところに、おいしいかす汁がある」(同町給食センター)

スーパーや百貨店などの店頭には冬になると酒かすがズラリ。阪急西宮北口駅(兵庫県西宮市)の構内では、西宮の酒造大手4社の酒かすが販売されている。自宅でかす汁を作ろうという家族連れらでにぎわう。

外食でも人気は高い。神戸市中央区の定食店「貴一」は「かす汁定食」を600円で提供する。ご飯、お新香、かす汁だけで他におかずは無し。それでも看板メニューになっている。

日本酒普及イベントではかす汁うどんが振る舞われている(兵庫県伊丹市)

日本酒普及イベントではかす汁うどんが振る舞われている(兵庫県伊丹市)

「かす汁を応用した料理もたくさんあるんですよ」。小西酒造(兵庫県伊丹市)の山村徳広総務部長がそう教えてくれた。同社は今月伊丹市内で開いた日本酒普及イベントで、来場者にかす汁うどんを振る舞った。毎年、午前中には売り切れてしまうほど人気が高い。

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神戸市中央区のラーメン店「こことん」は冬季限定でかす汁ラーメンを提供する。男性を中心に根強い愛好家が多いという。

灘や京都の伏見など、全国有数の酒どころが集まる関西。以前から、日本酒の生産過程で生じる酒かすを有効活用しようと、食品メーカーや料理人、一般市民らもアイデアを出し合い、様々なメニューが考案されてきた。

六甲味噌製造所(兵庫県芦屋市)は灘の酒造会社の酒かすと味噌を合わせた「かす味噌」を販売。ディップのように野菜などに付けて食べる。調味料を製造販売するキンリューフーズ(大阪府茨木市)は酒かすが入った鍋のもとを売り出している。

かすといっても、たんぱく質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなど栄養分を豊富に含んでいる。地元の食材を無駄なく、上手に使い切る関西人の「始末の精神」が人気の背景にあるのかもしれない。

かす汁の発祥ははっきりしないが、京都や奈良との説もある。六甲味噌製造所の長谷川憲司社長は「あまり肉体労働をしない京都の公家文化では、比較的あっさりしたかす汁が好まれたのでは」と自説を披露する。

日本酒の副産物に様々な食材を合わせて煮込んだかす汁。関西人のたくましい知恵がもう一つの名物を生んだ。

(神戸支社 竹内悠介)

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