震災後世代の内面描く 放送局がドラマ制作

2014/12/14 6:30
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1995年1月17日に起きた阪神大震災。来年の20年に合わせ、関西の放送局が神戸を舞台にしたドラマを相次いで制作、放映する。震災を知らない住民が増え、地元でも記憶は薄れてきた。災害や復興には直接触れず、震災を体験した世代と知らない世代との交流を通じ、地域の未来を描く。

「震災前は、あそこに私らの家がありましてん」

神戸の大学に通う辰木桂(藤本泉)に中年女性(竹下景子)が話しかける。東京で生まれ、神戸に越してきたばかりの桂は震災についてほとんど知らず、うつろな表情を浮かべる。

独立局のサンテレビジョン(神戸市)が制作した「神戸在住」の一場面だ。来年1月17日、テレビ放映と同時にテアトル梅田(大阪市)など関西や東京都内の映画館でも公開する。

開局45周年の同社がドラマと映画を同時制作するのは初めて。雑誌「月刊アフタヌーン」で連載した木村紺の漫画を原作に、白羽弥仁がメガホンをとった。

舞台は現在の神戸。兵庫県芦屋市出身で、自身も被災者である白羽は「神戸の被災者は昭和と平成を分けるような感覚で、『震災前』『震災後』と口にする」と話す。被災前の神戸を知る人々特有の感覚だという。

6千人を超える人が亡くなった。白羽は「戦争でも地震でも実際に経験した人、していない人の間には越えがたい壁がある。知らない人に『震災』と言ってもピンとくるのか」と指摘する。そうした曖昧さを口数が少ない桂に託す。

物語は桂が思いを寄せるイラストレイターの日和洋次(菅原永二)との関係を軸に進む。終盤、日和が病気で亡くなり、内向的な桂が初めて感情をあらわにする。「身近な人を亡くすというテーマには普遍性がある。そこから震災を知る人も知らない人も胸を開いて話し合えるのでは」

NHK大阪放送局が制作した「二十歳と一匹」の主人公、藤原理人(菅田将暉)は震災直前に生まれ、震災で両親を亡くす。育ててくれた祖父母は過去を語りたがらないが、理人は災害救助犬の存在を知り、指導役のハンドラーを志す。理人は周囲に支えられ、一歩一歩成長していく。

来年1月17日、全国放送する。製作統括の岡本幸江・制作部チーフ・プロデューサーは20歳の青年を主人公に据えた理由を「20年という歳月を考えた時、当時は何もできなかった赤ん坊が、何か役に立ちたいと思うまでに成長したことに希望を感じる」と話す。

震災時、岡本はディレクターとして報道に携わった。95年は世界各地から支援の人が駆けつけ、後に「ボランティア元年」と呼ばれる。「いろんな人が懸命に希望をつなごうとした。今でも心の底で苦しんでいる人に対し『側にいる』『明日がある』というメッセージを伝えられれば」

テレビは震災からしばらく倒壊した高速道路やがれきの山を映し出し、悲惨さを伝えた。両作品にはそうした映像はほとんど無い。

映像の力について、白羽は「痛みの共有を求めることまではできない」ときっぱり。一方、岡本は「成長の物語によって、視聴者と希望を共有したい」と強調する。両者の考え方は対照的だが、2作品とも震災を知る者、知らない者が寄り添うきっかけを提示しているのは確かだ。=敬称略

(大阪・文化担当 安芸悟)

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