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茂る「生きた化石」 メタセコイア(未来への百景)

大阪府交野市

高さ30メートルを超すメタセコイアがそびえ立つ。約25ヘクタールの広大な敷地に約6700種、約3万4000本の植物が集まる大阪市立大学理学部付属植物園(大阪府交野市)。今の季節はちょうど芽吹き始めたところだ。夏は緑が茂り、秋は紅葉、冬は枝ぶりがあらわになる。同大講師の厚井聡氏は「一年中眺めて楽しめる」と話す。

すくっと伸びたメタセコイアが夕日を浴びる(大阪府交野市)

校庭や街路でも見られる身近な落葉針葉樹だが、かつては絶滅種とされていた。現在も「生きている化石」と呼ばれるメタセコイアと同植物園は深い縁で結ばれている。

1941年、後に同大教授や同植物園園長を務める植物学者、三木茂博士が約100万年前の化石を調べていると、セコイアやヌマスギと思われていた植物の中に別の種を発見。メタセコイアと名付ける。当時はもはや地球上に存在しないとみられ、三木博士は「100万年前に絶滅した」と発表した。

しかし、45年に中国湖北省で神木に使われている木が未知の植物と判明。中国の植物学者のコ・センシュク氏や、米国人のラルフ・チェイニー氏が現地を調べた結果、三木博士の論文をもとにメタセコイアだと認定した。

三木論文は化石の葉の付き方や成長の痕跡から特徴を見いだし、断片的な情報しか無かったにもかかわらず、中国で発見された実際のメタセコイアと全く同じ姿を想定していた。厚井氏は「丹念な観察を重ねたことが功績につながった」と指摘する。

50年、チェイニー氏らの米調査チームから苗木100本が日本に送られ、うち1本が同植物園にきて増えていった。「メタセコイアを身近に広めたルーツはここにある」と大阪市立自然史博物館(大阪市)の塚腰実学芸員は強調する。

塚腰氏は三木博士、コ氏、チェイニー氏ら各国植物学者の連携が再びメタセコイアを世界に広めるカギになったとみる。「三木先生たちは(敵味方に分かれた)戦前、戦中も交流を絶やさなかった。学術的には中国側に新種の命名権があったはずだが、戦後の緊張した国際関係でも国家主義的な争いにならなかったのは、三木論文への敬意があったからだろう」と指摘する。

100万年前、メタセコイアが日本でいったん絶滅した理由は気候変動や海面上昇、他種との生存競争などが考えられる。どこかで見かけたら、三木博士らの情熱を思い浮かべてみるといい。

文 大阪・文化担当 安芸悟

写真 三村幸作

〈取材手帳から〉 メタセコイアは植樹して根付くまでは手入れが大変だが、いったん根付けばどんどん成長していく。滋賀県高島市の農業公園マキノピックランド、京都府精華町の精華大通りなどの並木が有名だ。韓流ドラマ「冬のソナタ」でも様々な場面に登場し、雰囲気を盛り上げた。
 大阪府吹田市の万博公園では太陽の塔の周りをメタセコイアが囲む。塔の裏面にある「黒い太陽」は滋賀県で採れたメタセコイアなどの化石や成分を含む土で作った信楽焼である。制作者の岡本太郎が「血の赤」を出したいと考え、独自の上薬を編み出して使ったという。

〈カメラマン余話〉 天に向かって真っすぐ伸びるメタセコイア。他の木と重ならずすっきりと見える場所はないか、行ったり来たりを繰り返す。ベストな位置から望遠レンズを構えると、緑の芝生の帯と垂直に並ぶ幹、真横に広がる枝が、幾何学模様を描き出した。

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