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もっと関西 大阪港、鵺が紋章 港の顔に妖怪 守り神に(とことんサーチ)
平家物語に登場 西洋の慣習ならう

2017/9/12 17:00
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 「大阪港の紋章には妖怪の鵺(ぬえ)が描かれているんですよ」とある能楽師が教えてくれた。鵺とは頭はサル、尾は蛇、手脚は虎の姿をした怪獣。「平家物語」では源頼政に退治されたとされ、能の演目にもなっている。そんな気味の悪い妖怪がどうして紋章になどなったのだろうか。

鵺塚にある大阪港の紋章。上部にみおつくしの鐘楼、盾に市章やいちょうの葉などゆかりのものが描かれる

鵺塚にある大阪港の紋章。上部にみおつくしの鐘楼、盾に市章やいちょうの葉などゆかりのものが描かれる

 早速、港を管理する大阪市港湾局を訪ねた。入り口に紋章のレリーフ。青い盾を両側から支える奇妙な動物は、サルの頭に虎縞(じま)の手脚、しっぽの先は蛇の頭。確かに「平家物語」などに登場する鵺の姿だ。同局の生田りかさんによると、紋章ができたのは1980年。今年開港150年を迎えた大阪港の歴史ではまだ新しい。

 「フランスのル・アーブル港と姉妹港提携を結ぶ際、当時の局長の指示で作成しました」と生田さん。海外の港湾都市と友好協定を結ぶ際、互いに港湾の紋章レリーフを交換する習慣がある。それまで市章「みおつくし」のレリーフを贈っていたが「西洋の紋章に比べて印象が弱い」と、西洋にならったデザインを考案することにしたという。

 西洋紋章学の権威、森護氏(故人)のアドバイスを受け、紋章学のルールに合致するよう半年がかりでデザインを作成。西洋の紋章は盾を両側から支えるサポーターという動物が必要で「大阪ゆかりの怪獣として鵺が採用されたようです」(生田さん)。サポーターは敵を威嚇する役割もあり、鵺はふさわしかったともいう。ル・アーブル港の紋章はサラマンダーという伝説の怪獣。紋章にはよく架空の動物が採用される。

 他の港はどうだろう。日本の港が紋章を持つのは一般的でない。国際戦略湾港5港でも紋章があるのは大阪港のほか東京港と神戸港だけだ。開港40周年を記念し、81年に紋章を作成した東京港のサポーターは竜神だ。神戸港は開港150年記念の今年、紋章をつくった。スコットランドのデザイナーに依頼し、サポーターは西洋の架空の動物であるシーホース(海馬)。「海の生物と、貨物を運ぶというイメージで選んだ」(神戸市港湾局の加納尚剛・開港150年担当課長)。竜神に海馬。いかにも海と縁が深い。それに比べ、やはり鵺には港湾の紋章として違和感を持ってしまう。

 思い悩むうち、大阪市と鵺のゆかりを示す史跡があるというので訪ねてみた。市営地下鉄都島駅のほど近く桜通商店街から裏路地に入ると鵺塚がある。「平家物語」によると、鵺が出没したのは京の都。平安時代末期、近衛天皇の御所で夜な夜な不気味な鳴き声を響かせ、天皇は病に伏せる。退治を命じられた源頼政は鵺を矢で倒し、死体は丸木舟で鴨川に流されたという。死体が流れ着いた先は諸説あるが、その1つが現在の大阪市都島区だ。

 鵺塚は鵺が流れ着いたとされる場所に立つ。鵺のたたりをおそれた村人は死体を埋め、祠(ほこら)を建てて懇ろにまつったという。現在の塚は1870年に大阪府が改修し、祠は1957年に地元再興賛同者の寄付で改修された。8月下旬の地蔵盆の時期、祭壇にはお供え物が飾られていた。「今も地元で鵺塚は大切な存在」。商店街の漬物屋の女性は話す。守り神のような側面があるのだろう。立派な塚で地元の人たちの信仰を集める鵺。大阪港の紋章としてふさわしく思えてきた。

 もっとも、せっかくの紋章も実際に使われる場面は多くない。市の公式行事は専らみおつくしの市章。鵺の紋章入りカフスボタンやネクタイピンなどのグッズも「売れるのは年に数個程度」(販売する大阪港振興協会)と寂しい限り。一般の知名度はまだ低いが近年、大阪港は大型クルーズ船などの寄港や、海外からの観光客が増えている。インパクトある紋章は外国人が鵺伝説や能など大阪の文化に興味を持つきっかけにもなる。大阪港の顔として、恐ろしくも頼もしい鵺のイメージ浸透に期待したい。

(大阪・文化担当 小国由美子)

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