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会館維持、たゆまぬ努力 京都観世会 能をひらく(1)
軌跡

2016/1/13 6:00
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元日朝、京都を拠点にする観世流能楽師の団体「京都観世会」(会長・片山九郎右衛門、会員約60人)が、恒例の「謡初(うたいぞめ)式」を京都観世会館(京都市左京区)で開いた。謡曲を披露する入場無料の催し。中でも、会員ほぼ総出演で唱和する「四海波(しかいなみ)」は、声が会館を満たして圧巻。人気が高まり、今年は約400人の観客を集めた。

元日に開かれた「謡初式」(京都市の京都観世会館)

元日に開かれた「謡初式」(京都市の京都観世会館)

謡初式は、会館ができた翌年の1959年に様式を改めた。建設に当たり、多くの人から寄付など支援を受ける。その感謝と、会館に親しんでほしいとの思いから企画された。

戦前、京都の観世流能楽師は川端丸太町にあった観世能楽堂を本拠地にしていた。だが、終戦の年の45年4月、空襲で電話局などの重要施設が類焼するのを防ぐため、能楽堂といった周辺の建物は「強制疎開」(取り壊し)を命じられる。以後、能楽堂の再建が本拠地を失った観世流の悲願となった。

再建する際、建設費の調達に苦労した。当代片山九郎右衛門の祖父で、当時の京都観世会会長を務めていた片山博通らが中心になり、後援者らを回り、寄付を募る。資金調達のメドがついて着工した後も、設備を充実させたこともあって、建設費が当初想定の2倍の8000万円に膨らんだ。

このため、新設する会館の管理会社を設立。同社の株を購入してもらい不足分に充てようと、株の取得も依頼することになる。それでも不足したため、銀行から借りたが、最後は窮余の一策として流儀の債券「流債」を発行。観世流の主な能楽師が低金利の流債を購入し、この資金を金利の高い借入金の返済に充てて何とか賄ったという。

「謡初式」の後は出演者が祝い酒を振る舞った

「謡初式」の後は出演者が祝い酒を振る舞った

その後も、会館維持の苦労は続く。76年に舞台の板を総張り替えし、79年は冷暖房設備などを刷新。2001年には会館正門の隣接地を購入し、駐車場を広げた。会館維持の積立金だけでは足りず、銀行借り入れを重ねた。

今年も夏に会館の天井と座席の改修を計画している。「費用の一部は銀行借り入れで賄う予定」(片山会長)。会館建設に携わった能楽師たちが「(維持の)苦しみはついて回る」と予想したように、絶え間ない努力があって晴れの舞台は維持されている。(敬称略)

編集委員 小橋弘之が担当します。

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