大学アメフト人気、なぜ西高東低?(謎解きクルーズ)
芝の会場/ルール解説→観戦しやすく 次の一手読む楽しさ→気質とマッチ
昨年12月、アメリカンフットボールの大学日本一を決める「甲子園ボウル」が甲子園球場(兵庫県西宮市)で開催された。関西学院大学が日本大学を破って4連覇を果たすと、約3万2000人の観客の興奮は頂点に。「これで関西勢は関東勢に8連勝や」との声も聞こえてきた。大学アメフトは人気も関西が関東をしのぐ。「西高東低」の背景は何だろうか。

日本アメリカンフットボール協会によると、日本アメフト界の中心は大学だ。2013年度の全国登録選手約1万4700人中、大学生が半数の約7300人を占める。
大学のチーム・選手数をみると関東が95チーム約3240人に対し、関西は53チーム約2250人。ただ甲子園ボウルは関西が38勝、関東は27勝(引き分け4回)で対戦成績は関西に軍配が上がる。
人気も関西が優勢だ。昨年、8大学で争う関西1部リーグ全28試合の1試合平均観客動員数は2352人で、関東リーグの約1.5倍。昨年11月、関学と立命館大学の優勝決定戦は約1万300人が観戦した。関東では観客が1万人を超えた試合は無い。リーグ戦をテレビの地上波で中継しているのも関西だけという。
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タオルなどグッズの売れ行きにも人気が反映されている。日大が年間400万~500万円なのに対し、関学アメフト部は昨年実績で約1千万円。五島由莉マネジャー(21)は「試合会場や大学生協、ネットで販売しているが、OBや学生に加え家族で見に来た子供ら一般ファンも多い」と話す。
大阪体育大学の藤本淳也教授(スポーツマーケティング学)の調査では関西の学生アメフト観戦者はOBが約40%、学生と保護者らが計約25%だが一般客も約30%。裾野は広い。
歴史をひもとけば日本での発祥の地は東京だった。1920年に米国から帰国したスポーツ指導者、岡部平太氏が旧制第一高等学校などに伝えたとされる。関西に根付いたのは戦後。日系2世の進駐軍軍人や海外スポーツを研究する教師ら、熱心な指導者に恵まれ旧制豊中中学(現大阪府立豊中高校)などでアメフト部が結成、盛んにプレーされた。進駐軍は北海道など他地域でも普及を図ったが、あまり定着しなかったという。
当時、旧制池田中(現府立池田高)で指導を受けた西日本アメリカンフットボール協会の古川明副会長(83)は「豊中中や池田中から多くのアメフト経験者が関学などに進学し、関西アメフト界の原点を築いた」と指摘する。

47年には甲子園ボウルが始まり、「関西学生スポーツの代表格」と呼ばれるようになる。人気が一気に広がったのは70~90年代、京都大学の躍進が起爆剤になった。76年、それまで145連勝中だった無敵の関学を京都大が破り、注目度が急上昇。その後、京都大が社会人王者との日本一決定戦「ライスボウル」を4回制し、人気を決定づけた。
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ブームが一過性に終わらなかったのは「先進的なマーケティングを重ねた結果」と藤本教授は話す。「砂ぼこりの舞うグラウンドでは試合が観客からよく見えない」(古川副会長)とリーグ戦で芝の競技場を確保。40年以上前から場内アナウンスでルールを解説しているという。
本場米国の試合を紹介するテレビ番組も73~86年に放送。実況を務めたスポーツキャスター、西沢暲さん(80)は「『次はどんなプレーをするか』を推理するのが楽しみ方の一つ。理屈をこねるのが好きな関西人気質に合うのでは」と話す。さらに、「関東勢に勝てる競技というのが根強い人気の一因では」(藤本教授)との分析もある。
巻き返しを狙い関東学生アメリカンフットボール連盟は昨年、チーム間の実力差を縮めようと1部リーグの16チームを上下2グループに再編。「見応えのある試合が増え、観客数は前年より5割増えた」という。「大学アメフトは関西」とあぐらをかいてはいられないようだ。
(大阪社会部 井沢真志)
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