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もっと関西 「忍び」なれども記録あり 日文研准教授 磯田道史さん(カルチャー)
忍者研究、実像に迫る 事実でフィクション 一層楽しく

2017/4/9 6:00
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小説や映画、アニメの題材となり世界的に知られながら、学術研究は立ち遅れていた「忍者」。その実像解明を磯田道史・国際日本文化研究センター(日文研)准教授が加速している。温故知新の先導者として幅広く活躍する人気の歴史家は、どのように忍者に光を当てようとしているのか。

地域創生に向け滋賀県甲賀市が結成した「甲賀流忍者調査団ニンジャファインダーズ」団長に2月、就任した。「忍者市」宣言をした三重県伊賀市の岡本栄市長とも面談し意気投合。協力して忍者の素顔を探る。

フィクションの世界では大暴れの忍者について、歴史学者は長らくもの静かで、社会構造や家族形態、経済事情などの学術研究はほぼ見られなかったという。

まず「忍びだけに手掛かりとなるような記録を残していない、と考えられていた」。また「『忍びは近世になって甲賀古士(地侍)らが自らの由緒を強調したものだ』との見方も研究者には強かった」という。

だが近年、伊賀や甲賀の忍者の子孫宅などで史料が次々見つかり、三重大などで研究が本格化している。

「先日も古文書があると聞き訪ねてみると、新発見の史料。闇討ちをしたり城に火をかけたり、戦国期の土豪同士の忍び戦の何とも生々しい記録だった。自宅にそんなものがあるとは認識していない人も多く、一戸ずつ回ることが大事」

現代を生きるためには過去を知ることが欠かせない、と訴え続けてきた。幕末の激動期を生きた一家を研究した「武士の家計簿」はバブル崩壊後の世相と重なり反響を呼んだ。東日本大震災後は災害史の研究を深めて先人の苦闘を広く紹介。その知見は時空も専門領域も軽々と飛び越える。

なぜ今、忍者研究なのか。3つ理由があるという。まず近世の武士は二君にまみえず「専業」が普通。この組織慣習は会社の多くや役所などに今も続く。だが「忍者は違う。起請文を交わして尾張藩に忍び役として仕えるなど、伊賀や甲賀に住んだまま他藩に召し抱えられた。特異な雇用形態、主従関係が興味深い」

さらに「火薬の調合比、毒を含む薬剤の効能など忍者が持っていた技術は当時の化学や薬学、工学を研究する上で非常に役立つ」

3つ目に挙げるのがアニメや映画など現代のコンテンツの「基礎工事」を行う重要性だ。「余りに荒唐無稽でも困る。事実をちゃんと踏まえた上で現実を飛び越えたほうが、一層フィクションも楽しめるはずだ」

日文研(京都市)に着任したのは昨年4月。早速、忍者研究に取り組むと宣言し、妖怪研究で知られる小松和彦所長を「妖怪の次は忍者か」とニヤリとさせた。

大学院生時代、歴史人口学の研究で知られる速水融・日文研名誉教授の調査に加わって2年間、日文研に通った。それ以来「日文研は学問的な『初恋の人』」という。「あの頃、ロビーなどにいると研究者が文系・理系の枠を超えて意見を交わすのが聞こえた。皆、教養の広さが桁外れで『知的体力』が普通ではない人ばかり。その気風は今も同じ」

日文研は5月、設立30年を迎える。記念講演会では初代所長で現顧問の梅原猛氏の聞き手役を務める。

梅原氏から以前はがきをもらったことがある。「私が著書に『歴史は面白いものだ』と書いたのに対し『そうだ。だが歴史学者が面白くなくしている』と。その通り」。日文研には歴史を生き生きと世の中に伝える研究者が集ってきた。昨年秋に着任した呉座勇一助教しかり。「『応仁の乱』が大ヒットする前に目を付けて引っ張ってきた。これが日文研の力」。頼もしい仲間を得て顔がほころぶ。

(大阪・文化担当 竹内義治)

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