2018年9月25日(火)

オバちゃん、アメちゃんくれへんかな(とことんサーチ)
関係なめらか 信頼の証し 「他人に突然」ありません

2015/11/14 6:00
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 大阪といえばオバちゃん、オバちゃんといえばアメちゃん。大阪の街中では中高年の女性が見ず知らずの人にも手持ちのアメをくれると聞く。だが記者はもらった経験が一度もない。どこで、どんな時にもらえるのだろうか。

大阪府豊中市から来た4人組。「マイアメちゃん」を見せてくれた(大阪市北区の天神橋筋商店街)

大阪府豊中市から来た4人組。「マイアメちゃん」を見せてくれた(大阪市北区の天神橋筋商店街)

 記者が歩くのは自宅のある大阪府北部か、職場のある大阪市中央区がほとんど。まずは場所を改める必要がありそうだ。オバちゃんが多い場所ということで、商店街を目指した。

 午後3時ごろに大阪市東住吉区の駒川商店街を訪ねた。予想通りオバちゃんでにぎわっている。期待を込めて長さ700メートル余りの商店街を1、2往復したが、声さえ掛からない。

 諦めて作戦を変える。取材の目的を伝え「すみません、アメ持ってますか」と尋ねてみた。呼び止めたオバちゃん(65)は「持ってる」とあっさり。「要る? よそでもろたし」とショウガのどアメをくれた。

 どんな時に渡すのか。「そやねえ、友達と時間潰す時やカラオケで」。一緒にいたオバちゃん(70)も「カラオケの時は必須やね」と同調する。ただ2人とも「他人にいきなり渡すことはない」と口をそろえた。

 近所に住むという別のオバちゃん(77)も「見ず知らずの人にはあげへん。嫌がる人もおるやろ」。プロポリスのどアメを記者に渡しながら「むずかっている子供がいる時、母親にあげるかな」と教えてくれた。

 街頭で聞く限り、大抵のオバちゃんはアメを持っていた。天神橋筋商店街(大阪市北区)で出会った、大阪府豊中市から来たという4人組は全員が「マイアメちゃん」を持っていた。「時間潰す時には重宝するな」と笑顔を見せる。

 ただ、誰彼かまわずアメを渡すわけではないことも分かった。駒川商店街振興組合の山口隆二事務長(73)は「赤の他人に突然渡すことはない。相手への信頼が前提です」と話す。基本的には寄り合いや会話のついで、といったところか。見ず知らずの人の場合、電車で隣り合う、席を譲るなど何らかのきっかけが要るようだ。記者にアメをくれたのも、取材に協力してくれた面があるのだろう。

 ところで、大阪のオバちゃんはなぜアメちゃんなのか。大阪の甘味文化に詳しい老舗アメ会社、豊下製菓(大阪市)の豊下正良社長(66)は「江戸時代から大阪には砂糖を扱う薬種商が多かった」と話す。その流れで大阪からはノーベル製菓(同)、パイン(同)など全国的な専業メーカーが多く生まれた。土地柄なじみが深かったといえる。

 もう一つの理由は、大阪人の気質だ。商いの街なので円滑な人間関係を重んじる。女性同士の立ち話や列車で誰かと隣り合った時など「場を和ませるために手持ちの食べ物をあげることは昔からあった」という。

 豊下さんによると、かつては酢こんぶやミカンを渡すことも多く、アメはその中の1アイテムだった。ところが戦後「ピロー(枕)タイプ」と呼ばれる1粒ごと密封包装したアメが登場する。「密閉性が高く、従来のひねり包装より扱いやすい。後で食べても誰かにあげてもいい。そんな便利さから定番になった」(豊下さん)と分析する。

 大阪とオバちゃんとアメちゃん。その関係は分かったが、一つ気にかかることがあった。総務省の家計調査によると、大阪市の1世帯(2人以上)当たりのキャンデー購入額は年1753円(2012~14年平均)。全国の都道府県庁所在地、政令指定都市で最も少ない。なぜか。

 豊下さんに尋ねると「コミュニケーション手段ですから。必ずしも自分で買わないんです」と苦笑い。確かに記者にアメをくれたオバちゃんも人からもらったと言っていた。人間関係の潤滑油として次々に人の手を渡る。大阪では「アメは天下の回りもの」なのだ。

 法則が見えてきたと思っていたら、天神橋筋商店街でオバちゃん(72)が一言。「そういえば最近また振り込め詐欺がはやってるてテレビで言うとった。あんたみたいな格好らしいわ」。え、今まで自分がアメをもらえなかった理由って、そういうこと?

(大阪地方部 海野太郎)

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