2018年2月22日(木)

「超精密」金型で世界に挑む(次代の創造手)
ケイパブル社長 河原洋逸さん(63)

2015/4/9 6:00
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■「職人の技、必ず生かせる」 半導体の海外顧客を開拓

 「製造業のコメ」といわれながらも衰退に歯止めがかからない金型産業。全国有数の集積地の関西でも工場閉鎖が続く。そんな業界に参入し、新境地を開いているのがケイパブル(京都市)の創業者で社長の河原洋逸だ。半導体製造に使う「超精密」金型を端緒に、町工場の技と大企業をつなぐ懸け橋として奮闘する。

◎  ◎

 「とにかく仕事がないんです」。ほこりをかぶった最新の工作機械を前に、金型工場の経営者が窮状を訴えていた。耳を傾けていたのはかつて東証1部上場の半導体製造装置大手、TOWAで社長を務めた河原。「御社の技術力が埋もれているのはもったいない。一緒にメード・イン・ジャパンの金型を復権させましょう」と熱く語りかけた。

半導体製造に使う金型の営業に奔走する河原さん(京都市南区)

半導体製造に使う金型の営業に奔走する河原さん(京都市南区)

 ケイパブルは工場を持たず23人の社員の大半が半導体装置メーカーからの転職組だ。営業や設計を代行し、金型業者には切削や研磨に専念してもらう。いわば職人を集めたオーケストラをまとめる「指揮者」だ。

 河原が業者を引き付けるのは情熱だけではない。半導体という極限まで技術力を求められる領域に挑む姿勢が職人魂に火を付ける。

 半導体は1ミリ角のチップでマイクロメートル(1マイクロは100万分の1)単位の隙間に千本近いワイヤを張り巡らせる。成形に使う金型には普通の精密金型よりさらに5倍近い精度の加工が必要。許される誤差は2マイクロメートル以下と髪の毛の40分の1程度だ。河原はそんな難易度の高い領域をターゲットに絞った。

◎  ◎

 家電企業などの海外進出で金型業者の仕事は減り、転廃業が続く。ならば海外企業の技術が及ばない半導体の超精密加工を突破口に海外市場を開拓する。それがケイパブルの真骨頂だ。日本金型工業会の中里栄専務理事(58)は「新分野への橋頭堡(きょうとうほ)になってくれた」と喜ぶ。

 常々「金型は成熟市場ではない」と語る河原。2011年にTOWA社長を退き引退する予定だった。だが偶然引き受けた経営セミナーで講義した後、ある金型業者から「講義より受注をください」と声を掛けられる。河原の頭にはTOWA時代の記憶がよぎった。

 当時、台湾の業者に金型の製造を任せ、納期や品質でトラブルが頻発していた。アジアの金型メーカーは高品質の製品を作れず、半導体企業は日本製金型を現地製品の倍近い価格で買うことがある。「職人の技は必ず生かせる」。新しい顧客を開拓するため、12年にケイパブルを創業した。

 これまで計160を超す町工場へ出向き、自らの目で技術力を確かめてきた。さながら「歩く金型図鑑」となった河原に協力する企業は今や45社を数える。「しっかりと利益を出せて海外顧客との接点もできた。いいパートナーと出会えた」。協力企業であるテック精密(福岡県遠賀町)の武谷富雄社長(66)は語る。

 顧客リストにはルネサスエレクトロニクス、米テキサス・インスツルメンツなど大企業も名を連ねる。前職の丸紅、TOWA時代を含め、20年以上半導体に関わって築いた信頼が結実した。今では自動車や電機大手からも依頼が舞い込む。

 目指すのは金型の専門商社。職人たちを束ね、名実ともに世界一の金型集団を目指す。=敬称略

(大阪経済部 山本夏樹)

 

ばっくぼーん〉出向先で金策、経営学ぶ
 1997年からの約1年半、丸紅からソフマップへ副社長として出向しました。当時、ソフマップは不透明な融資や過当競争で極端に財務状況が悪化しており、着任当初から金策に走り回りました。
 98年12月には全店舗の売上金をかき集め、債務を弁済しました。銀行団に示す経営計画を寝ずに作り、何とか運転資金を確保しました。後にTOWAでも経営再建に携わりましたが、当時と比べればかわいいものです。
 会社内部が空中分解するなか、ビジョン作成や人心掌握の手法を体で覚えました。株式上場まで会社を引き上げ、丸紅に戻りました。人生で最も濃いこの時間が後に経営者としての基盤となりました。

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