2019年1月19日(土)

湿度一定 100年先まで 大阪泉州桐箪笥(ここに技あり)
大阪府岸和田市

2016/11/8 6:00
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当て木の上から金づちを振るたび、凹凸が彫り込まれた桐(きり)の板同士がかみ合って、箪笥(たんす)の姿を形作っていく。「あり組み」と呼ばれる工法。ネジやクギを使うよりも各部材の接地面が多いため強度が高まる。「100年後も使える」という頑丈さを支えている。

■皇室にも納品

凹凸を彫り込んだ桐の板を丁寧にはめこんでいく

凹凸を彫り込んだ桐の板を丁寧にはめこんでいく

大阪府南部の泉州地域に伝わる「大阪泉州桐箪笥」は江戸時代に生まれたとされ、商人や地主らが娘の幸せを願い、嫁入り道具として持たせたという。角をカンナで丸く削った重厚さと上品さが特徴。1919年創業の「田中家具製作所」(同府岸和田市)は、伝統工芸士6人を抱え、婚礼家具の桐箪笥を皇室にも納めている。

箪笥づくりは桐の丸太の買い付けから始まる。木目がしっかり詰まり、品質が安定しているという東北産や北米産を吟味。製材後は1年半から2年ほどかけて風雨にさらし、木に含まれたアクを抜く。

木の肌が銀褐色に変わった後は、さらに3~4カ月間室内で乾燥させ、反りやねじれを取るために火であぶる。表面にカンナをかけると、光沢に富み木目の透き通った材質が現れた。

■手作業が要

職人芸が際立つのは、桐箪笥の命ともいえる丈夫さを生むあり組みの作業。桐は天候などに応じて自身の湿度を調整するため、乾燥した日は湿気を出し、湿度の高い日は吸収する。収納した衣類を傷めない最大の長所だが、同時に伸縮するため、状況に応じて板が接合する凹凸部の彫りの幅などを変える必要がある。

「機械では微細な調整ができない」と話すのは、職人歴20年の粟田敏幸さん(40)。緻密な手作業は2~3カ月かかり、着色以外は1人の職人が手がける。

1さお数十万円から300万円ほどする逸品。安価な外国製品に押されるなどして、半世紀前に数十あったとされる製造業者は現在8社に減った。ただ、田中由紀彦社長(54)は「生涯使い続けられる品を求め、女性客が店を訪れることも少なくない。期待に応えられるよう、地道な技術を受け継いでいきたい」と話す。熟達するまでに約10年。誇れる職人技の再興に意欲をみせている。

文 大阪社会部 桜田優樹

写真 山本博文

〈カメラマンひとこと〉 木の香りが漂う工房に金づちの小気味よい音が響く。職人はミリ単位の繊細な作業を流れるようにこなしていく。予想以上のスピードに慌ててカメラを構える。ぴったりと組み合わさる板の接合部にレンズを近づけると、木目が細かな桐の表情まで写った。

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