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インバウンド(訪日外国人)消費は高額品から比較的価格の安い日用品などにシフトしている。中国人観光客が日本を訪れた際に必ず買うべき医薬品などをまとめた「12の神薬」のうち、5つをそろえるのが小林製薬だ。小林章浩社長にインバウンド消費の現状と今後の戦略などを聞いた。
――「爆買い」が失速し、訪日客の買い物行動が変化していますが、現状はどうでしょうか。
「まとめ買いの対象が高級腕時計や家電などの高額品から化粧品や医薬品、日用品にシフトしている。これは当社にとってチャンスだ。神薬とされている、液体ばんそうこう『サカムケア』などは安くてかさばらない。10個、20個買うという中国人客のニーズに合致する」
■1年で増収効果倍に
――インバウンドによる増収効果をどの程度と見ていますか。
「2015年3月期は約23億円だったが、16年3月期には約43億円とほぼ倍増した。インバウンドはブームがいつ終わるか分からず、(あればあったで)ラッキーと考えていた。さすがに売上高が2倍になると、訪日客消費は無視できない存在となった」
「足元の訪日消費額が減ったといっても、中国で海外旅行を楽しむ所得層は一定数いる。引き続きドラッグストアに立ち寄る客も多いし、むしろ今後は低価格の医薬品や日用品にお金を使うようになるだろう」
――売れ行きに変化はありますか。
「今年に入って定番の神薬だけでなく、多様な商品が売れている。気管支炎を改善する漢方薬『ダスモック』や納豆菌培養エキスなどを含むサプリメント『ナットウキナーゼ』などは新たな神薬といえるかもしれない。どれも中国では買えない希少性が人気を集めている理由だ」
■販路確保へM&A検討
――今後のインバウンド戦略は。
「客を待っているだけでなく現地でのニーズに応えて越境EC(電子商取引)などにも取り組む。3年後をメドに中国で医薬品の販売を始める。現地で医薬品を製造販売するには許可が必要だが、取得する計画だ。インバウンドだけでなく、中国ビジネスの拡大につなげる。販路を確保するため、現地企業をM&A(合併・買収)することも検討する」
「いずれは現地向けの商品をその国で開発したい。新商品の開発のためのアイデア会議は今後、海外でも開く。外国人社員ももっと増やしていく」
(聞き手は大阪経済部 加藤彰介)