2019年6月26日(水)

火元一撃 泡で「窒息」 モリタHDの消火システム(ここに技あり)
大阪市

2015/12/22 6:00
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高さ3メートルほどの火柱が上がり、20メートル四方の実験棟に煙が充満する。視界は遮られ、口を覆うマスクをしていても喉がひりひりする。火元は缶やプラスチック製品で覆われ、放水してもはじかれる。実際の火災現場ならば混乱に陥るような状況だ。救世主は泡。火元をあっという間に包み込んだ。消防車最大手のモリタホールディングス(HD)の消火システムが消防の現場に変革をもたらした。

■水に1%の薬剤

モリタHDは技術研究所(三重県伊賀市)で約80人の消防隊員を前に、泡消火システム「CAFS」の消火実験を披露した。水に自社開発の無害の薬剤を1%溶かし、圧縮機で泡立て、ホースを通して発射する。泡はひげそりクリームのようにきめ細かく、壁に吹きかけても張り付いて落ちにくい。

辺り一面、白い泡と煙に包まれた(三重県伊賀市で行われた消火実験)

辺り一面、白い泡と煙に包まれた(三重県伊賀市で行われた消火実験)

実験の想定現場はスクラップ置き場やコンテナの集積所。木などとは異なり水を完全にはじいてしまうため、放水しても火の手は収まらない。実験では4分半で450リットルの水を使っても完全消火には至らなかった。一方、泡消火では45秒で鎮火した。火元から酸素を取り除く「窒息」の状態と、火元の温度を下げる「冷却」の状態を同時に実現できるのが強みだ。

CAFSを使うと水の体積は最大20倍に膨らむ。使用する水の量を大幅に削減でき、水の確保が難しい現場では消防車のタンクの水を節約できる。体積が膨らんだ分、ホースの重さも軽くなり、消防隊員の疲労軽減にもつながる。消火薬剤を開発した技術研究所の坂本直久所長(52)は「薬剤は人や周辺環境に害を与えないようにした」と話す。

■時間稼ぎに有効

実験を見学した愛知県岩倉市消防本部の鈴木和憲さん(42)は「CAFSを使えば水源を探す時間を稼げる」と評価する。

モリタHDは海外展開も視野に入れている。東アジアを中心に販売実績があるが、新たに狙いを定める国の一つがインドネシア。森林火災が収まらず周辺国を巻き込む煙害に悩まされている。火災の長期化の原因になっている泥炭を含む土壌には泡消火が有効とみており、対応機種の開発を急いでいる。

文 大阪経済部 上田志晃

写真 三村幸作

〈カメラマンひとこと〉
 放水直後、炎が消え始める一瞬を撮った――つもりだったが、既に火は消えている。消し止める速さは、想像をはるかに上回っていた。代わりに撮れたのは、はじけ飛ぶ雪のような泡の塊。最先端の消火の技が、想像していなかった絵を撮らせてくれた。

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